本日は、SFアクション映画『エリジウム』。社会情勢を巧妙に反映したメッセージをくみ取りつつ、SF的な物足りなさも含めて考察。この映画の伝えたい事とは…!?
SFや画好きな方、ぜひこの映画の感想も聞かせてください!
いざ、SFの世界へ…!!
エリジウムのネタバレ感想・考察・徹底解説 (Ryo)
エリジウムのあらすじ
こんばんは、Ryoです!
本日は、マット・デイモン、ジョディ・フォスター主演の2013年SFアクション映画『エリジウム』を考察します!!
こちらの作品、ニール・ブロムカンプ監督の作品です。この監督といえば、人種差別をテーマにしたSF映画『第9地区』がとても有名ですよね。本作品も、彼らしい「世界の問題」に対する啓発が盛り込まれています。
時は、西暦2154年。地球は汚染が悪化し人口過剰となります。そこで、超富裕層は衛星軌道上にスペースコロニー「エリジウム」を建設して、何不自由ない人生を謳歌していますが、荒廃した地球には多くの地球人類が貧困のなか暮らしています。地球に住む市民にとって、高度に発展した科学技術のもとで暮らせる「エリジウム」はその名の意味の通り「理想郷」となっています。
そのスラム街に住むマックス(マット・デイモン)は、工場での事故により照射線を浴びてしまい、余命5日と宣告されてしまいます。助かるためには、「エリジウム」にある最先端医療が必要…ただし、反移民法を強行するデラコート長官(ジョディ・フォスター)やそのほかエリジウム市民はそれを受け入れず、マックスによる「エリジウム」への潜入戦が始まります。
それでは、今日も見どころを3つで解説していきます。
SF的な物足りなさも追及するので、ぜひこちらご意見ください♪笑
①現代の問題を露呈するみごとな舞台設定
②ただし…SF設定が甘い!?
③実は、[資本主義VS社会主義]を表現していた…!?
ここからネタバレだらけなので要注意です~(^^♪
現代の問題を露呈するみごとな舞台設定
ニール・ブロムカンプ監督は、アカデミー賞受賞の『第9地区』でも有名になったように、社会情勢を反映するのが非常に得意といえます。『第9地区』を初めて観たときはとても衝撃的でしたね。まず、エイリアンといえば従来まで「未知の敵」という印象だったところを、「社会的弱者」として捉えたわけですから、非常に奇抜な設定だったといえます。
本作品も、荒廃した地球が舞台というSF映画的な設定ではありますが、「エリジウム」という極楽の浄土に住めるのは超富裕層だけで、この点こそがこのSF映画の特徴でしょう。これは、現代の世界が貧富の格差で大きく分かれているのとまったく同じなのです。結局、富める者は裕福な暮らしができますが、そうでない人たちは貧しさと苦しみ戦い続けることになることが分かります。つまり、時代や技術に関係なく、人類の間で格差が生まれるのは普遍的であり、常にその底辺にいる人たちは生きるので精いっぱいな人生を送ることになることが示唆されています。
監督自身が貧困や紛争に葛藤したヨハネスブルク(南アフリカ共和国)の経験をしていることから、こういった情勢が描かれている点は非常にリアルですよね。
本作品で出てくるドロイドが市民を痛めつけている光景も、どこか先日のアメリカでの黒人絞殺事件と重なるところがあります。貧しいという理由だけで、なにか悪いことをしそうという先入観があるのはなぜなのでしょうか。
また、『第9地区』同様、画面が常に汚らしいという印象も受けます。なんだか全体的に白っぽい映像ですし、スラム街も本当に荒れ果てたロケーションです。こういった作り物と感じさせない「汚さ」は、おそらく監督自身の経験に基づいているのではないでしょうか。
こういった意味で、この映画は社会情勢の課題をリアルに露呈する素晴らしい作品でしょう。
ただし…SF設定が甘い!?
さて、SF的なストーリーについてですが、少々突っ込みどころがあります笑
まず、あらすじ記載の通り、マックスは余命5日と宣告された時点で、「エリジウム」の医療ポッドに入る必要が生じます。そこで、闇商人のスパイダーと以下のような取引をします。
・マックス → スパイダー : エリジウムへの片道切符を提供する
(通常であれば近づくだけで撃ち落とされてしまうところを、密入国する為)
・スパイダー → マックス : エリジウム市民のデータをマックスの脳内にコピーする
※後に:エリジウム再起動プログラムのデータを脳内にコピーする、に変更される
(このデータがあれば、全地球人類がエリジウム市民として再設定されるため)
彼の親友はこれに反対しますが、マックスは同意します。そして、エクソスケルトン(強化外骨格)の手術を受けて「機械人間」(勝手に呼称していますw)になった後、エリジウムの設計者であるカーライルを襲って脳内にデータをコピーするのですが、この辺からよくわからなくなります笑
そもそも、脳内にデータコピーってどういうことなのか。「エリジウム」市民は、全員ウェアラブルコンピュータのようなものを耳につけており、いつでも脳内にデータが転送可能らしいのですが、どういった仕組みなのかまったく描かれていません。カーライルの脳みそにたまたま超重要なデータがあったことから、マックスたちの挑戦が大きなものに変わっていくのですが、この脳みそデータなるものがボクはあまりしっくりきませんでした…笑
こんなに発展した世界なら超ミクロな情報端末でもありそうですが、脳内にデータコピーをするメリットは何でしょうか。死んだら消えてしまいます。また、コピー後に時々頭痛のようなものがマックスを襲いますが、彼の頭の中では一体なにが起きているのでしょうか。記憶とデータが混在して頭痛になっているのでしょうが、この「機械」と「人間」の合成設定が繊細に描かれていないため、「え、めちゃ不便やん!笑」と思ってしまうシーンが多いのです。なんだか「機械人間」のガジェットゆえに演出しているような「作為的な背景」を感じ取ってしまいます。
ここ、ラストで主人公が死んでしまうくらいの大事な大事な設定なのですが、曖昧なのでラストも「あれ!?」って感じであまり感動がないのです。確かにカーライルが「ダウンロードすると死ぬ(OPT +B : LETHAL)」みたいなオプションを選んでいるシーンがありますが、あれだけでは「彼の脳みそからダウンロードしたら彼自身が死ぬ」なのか「このデータを移した後にダウンロードしようと試みた者が死ぬ」なのかはっきりせず、彼の意図がよくわかりません。脳内データとプログラム起動関係の設定がもう少し描かれていたほうが、追いついていけたのかなという感想です。
また、技術の格差についても少し突っ込みどころがあります。
この物語は、マックスが先端医療を全地球人に解放すべきだと考えて大きく動き始めるのですが、そもそも2154年なので地球にはもう少し高度な医療技術や軍事力があっても良いのではないでしょうか。
いくら人口過剰や環境汚染とはいえ、スラム化した地球が本当にただのスラム街でしかない、なんてことはありうるのでしょうか。多くのSF映画では、こういったシチュエーションでは必ず「レジスタンス」「秘密組織」なるものが密かに結成されており、「お前たち!!いざ立ち向かうときが来たぞ!」というパターンが多いですが、本作品ではそういった人たちすらいません。
「エリジウム」に避難した富裕層は20万人だけです。そのほか何十億人も地球にはいますが、彼らには一切の軍事力や知恵がないのでしょうか……描かれている地球は本当にひたすら「スラム街」のみです。一体なにをしているのでしょうか。地球人類総勢で地下で巨大な戦艦でも作って、「エリジウム」に立ち向かっていく[地球人VS地球人]バトルストーリーのほうが自然だし皮肉だし面白いんじゃないかなぁと思います。しかも、この荒廃した地球を見守っているのは、クルーガーという荒くれもの一人です。一体この広大な地球を一人でどうやって管理しているのでしょうか。管理体制も杜撰であるとしか言えず、「エリジウム」がずっと極楽に保たれてきた理由があまり納得いかない設定なのです。
また、SF映画王道パターンの「強大な敵を倒して」「家族を守る!」などのハートウォーミングな展開もありません…笑 そもそも、フレイという幼馴染の女性が登場するのですが、どうして恋人にしなかったのか…。途中から幼馴染のために体張ってアクションしているマット・デイモンに感情移入できないのはボクだけでしょうか…。ラストでフレイの娘が先端医療で助かるのですが、主人公からしたら赤の他人なので、視聴者のボクとしても「ああ、助かったんだね」くらいで終わってしまいます。そもそも家族層むけの映画ではないかもしれませんが、もう少し人間ストーリーがあった方がSF設定のコントラストが映えるのかなと思います。
ということもあり、SF的な設定が甘いのかなぁという印象ですよね。
実は、[資本主義VS社会主義]を表現していた…!?
とはいえ、冒頭にも記載した通り、見事な社会風刺の視点は素晴らしいです。
ラスト、マックスは自分の命と引き換えにエリジウムを解放するのですが、この後、気になりませんか?
結局、全員が「エリジウム」に住めば(エリジウム市民になれば)、それはまたこの映画での「地球」と同じことになりませんか?
パレートの法則という有名な法則をご存じでしょうか。
「売上の8割は、全従業員のうちの2割で生み出している」という法則なのですが、まさにこの通りなのかもしれません。
2割になった富裕層を切り取って2割だけ持っていけば、その中でまた貧困は生まれ、2:8に分かれていきます。8割は地上、2割は理想郷。10割全員が「理想郷」で人生を送るなんてことは可能なのかどうか、思わず考えてしまうようなラストである点、監督の意図は巧妙だなと思います。
これ、冷静になって考えれば、資本主義か社会主義かのイデオロギー対決なんです。
全員平等な世界を築きたい社会主義の世界と、多少の実力の差が人生に反映される資本主義の世界。人類の歴史では、皮肉にも資本主義が勝っているわけです。正しい・間違っている、ではなく、実績ベースで資本主義がこの世界を支配しています。歴史って面白いですよね。ただし、それが人類の普遍なる本質なのです。
そういった意味で、この映画のラストは、「やっぱりまた同じことが起こるのかな」と考えさせるメッセージが盛り込まれており、個人的には面白かったので今回コラムとさせていただきました。
SF好きからしたら物足りなさMAXかもしれませんね。その気持ちもとても分かります笑
ただ、「エリジウム」の世界観は結構好きです。
映画『インターステラー』に出てたような球形の形をした世界が描かれています。どうやら宇宙空間にスペースコロニーを建設するとなればこういった形になるのは、世間一般になっているようですね笑
この辺の綺麗な映像に関しては好きですし、また、「エリジウム」の宇宙船やドロイドもガジェット好きには嬉しい映像だったのではないでしょうか。
また、マックスがエリジウム再起動後、エリジウム市民の命令だけしか聞かなかったドロイドたちが、全員エリジウム市民になったことで、行動が変わります。こういうところは現実味がある皮肉を感じられて、面白いですよね。地上の人間にも機械にも裏切られてしまった元エリジウム市民たちの反応は、まるで警察にも国民にも裏切らてしまった君主のように映ります。
(むしろロボコップのようといった方が分かりやすいか…)
さあ、「エリジウム」解放後の地球はどうなるのでしょうか。
また、少数だけが富裕層となり、第2の「エリジウム」を独占してしまうのでしょうか。
それとも、全員フラットな理想郷が築かれるのでしょうか。
この「資本主義」「社会主義」のイデオロギー対決を思わせるような本作品のメッセージは、十分だったといえるでしょう。
ということで、今日は映画『エリジウム』でした~!!
ぜひ皆さんの感想も聞かせてくださいね(≧▽≦)
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今後も日本のSFを盛り上げていきます!!!
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コメント
[…] そして、そのブラックホール内部で収集した特異点のデータを発信することで、ブランド教授でさえ解けなかった「重力方程式」が解けるようになったんですね。この謎が解き明かされたことで、人類全員が地球と同じような環境(重力)のもとで暮らすことのできる巨大なスペースコロニーを築くことに成功します。実際、物語のラストでは、映画『エリジウム』で出てきたような地平線が球形になっている世界が描かれています。 […]