2015年公開のサバイバルSF映画『オデッセイ』のネタバレ感想評価で徹底考察・解説!
つまらない?面白い?火星や宇宙の科学考証はガチ?原題の意味は?
巨大な風船の意味は?なぜ中国か、ラストシーンと関係が!
感動のじゃがいも映画を分かりやすく徹底解説!
いざ、SFの世界へ…!
オデッセイ のネタバレ感想・考察・徹底解説 (Ryo)
本日は、2015年公開のSF映画『オデッセイ』のネタバレ徹底考察コラム!
20項目で完全解説いたします!
- “どう生きるか”――NASA全面協力の宇宙サバイバル大作
- 原作はWeb小説?原題『the Martian』と『オデッセイ』の意味
- 弟トニーの死も関係?悪人も死人も登場しないリドリー作品
- NASAでも14日間ミッション”HERA”がある!
- 火星の重力、大気圧、気温は合ってる?ロケ地はどこ?
- 置き去りにされるマットデイモン再び…ジャガイモ映画とはw
- 排泄物を封しているのはなぜ?水や熱はどう作った?
- 意外とコミカル?ビデオ記録によって分かる主人公の感情
- NASAのテディVSミッチが現実的でまた高評価!
- マーズ・パスファインダーって計画?探査機?ローバーは?
- アレス3とか4とは?火星との通信時間22分は正しいのか
- 補給機アイリスはなぜ爆発?中国の太陽神が登場!!
- なぜ中国?ハリウッドが中国市場狙ったというのは誤解!
- スイングバイを利用したリッチ・パーネル・マヌーバとは?
- シャワーを浴びたのはなぜ&どこ?髭をそったのは…?
- 火星上昇機”MAV”とは?現実世界でもこれがキーになる!
- ワトニーが作っていた巨大な風船の意味は?
- 船先エアロック400キロを背中で動かせるのか?
- アイアンマン作戦も原作では無い?70億人が待つ理由は…
- 名言:宇宙はある時点で人間を見はなす。覚悟しておけ
“どう生きるか”――NASA全面協力の宇宙サバイバル大作
公開当時、非常に有名になった宇宙サバイバル映画ですね。当時、
・2013年の『ゼロ・グラビティ』
・2014年の『インターステラー』
に続く、アストロノーツ映画とも呼ばれるSFということで、こういったジャンルの人気が高まっていたのかもしれません。
(2019年の『アド・アストラ』も近いですね)
『スターウォーズ』シリーズやエイリアンもののように宇宙人とバチバチ戦うわけではなく、宇宙空間やとある惑星に流れつきどう生きるかを描くといったドラマに焦点を当てたSFジャンルですよね。
また、ドラマという点において、今作は家族愛や恋愛といった要素、金でものをいうインパクトだけの映像シーンがほぼ無く、孤独と闘う男の真理に徹底追及している点もポイントです。要は、あまり商業的な匂いがしないSF映画、というわけです。
NASA全面協力もあり、科学考証もわりとしっかりしていると評判で、ハードSFの部類に入るでしょう。ということで、本当に科学的矛盾はないのかも含め、わかりづらい用語やシーン、疑問が残る点について考察していきます。
▶ゼロ・グラビティ、インターステラー、アド・アストラの考察コラムはこちらから!
原作はWeb小説?原題『the Martian』と『オデッセイ』の意味
本作には原作があります。アンディ・ウィアーの小説『火星の人』(2011年出版)ですね。こちらきっかけがスゴイのですが、なんとこのウィアーさんはWeb小説として連載したものを自費出版し、それが映画化したという流れなんです。一般の小説家ではないところに夢がありますし、そもそもよくこんなクオリティの話をかけるな、と感心してしまいます。
実際、2016年に優秀な新人SF作家に与えられるジョン・W・キャンベル新人賞を受賞したほか、日本でも第46回星雲賞海外長編部門を受賞したり、『SFが読みたい! 2015年版』のベストSF2014海外篇1位を獲得したりしています。
第2作は月面が舞台の『アルテミス』という作品でこちらも和訳されています。『プロジェクト・ヘイル・メアリー』という最新作も有名になり、2022年4月26日付でのAmazonの「SF・ホラー・ファンタジー」ジャンルランキングで1位を獲得、映画化も決まっている作品になります。
ただし、原題は『the Martian』ということで、小説の方の邦題はそのまま『火星の人』です。おそらく響き的に古いというかあまりインパクトがないネーミングなので、映画では『オデッセイ』と名付けられたのでしょう。多くのレビューで原題のままでいいといつも通り批判されてますw
ちなみに『オデッセイ』とは、古代ギリシャの叙事詩であり、「長期の放浪・冒険」という意味らしいです。まぁ、意味は確かに間違っていないなw
あとは、『2001年宇宙の旅』をリスペクトして、原題の『2001: A Space Odyssey』の『オデッセイ』を拝借したのかもしれません。
弟トニーの死も関係?悪人も死人も登場しないリドリー作品
監督はリドリー・スコット。『ブレードランナー』や『プロメテウス』などのSF超大作で有名ですよね。今作は従来の彼の人気映画とは少し違った路線ではありますが、強烈な近未来的ビジュアルで観客を虜にするような手法は通ずるものがあります。
ただし、リドリー・スコットのファンからはちょっと彼らしくないということで落胆の声もあるようです。特に顕著なのはこの映画には「悪人」が一人もいないのです。
えぇえ!?
逆によくそれでここまでヒットできたな、と脚本を尊敬してしまいますが、悪人どころか死人も一人も出ません。つまり、諦めずに戦った結果、全員が最後は勝つ!という、なんともリドリー・スコットらしからぬハリウッド的な展開なのです。
とはいえ、今作は「生きて帰る!」という趣旨のSF映画。彼なりの思いを込めたのではないでしょうか。「サバイバル映画の決定版であり、SF版ロビンソン・クルーソーだ」と自分で評価していますしね。
ちなみに2012年には同じく映画監督の弟トニー・スコットが自殺してしまいました。リドリーからすると、なにか死生観に変化があったころなのかもしれません。
※トニー・スコットといえば、『トップガン』が有名ですが個人的にはタイムループものの『デジャヴ』が結構好きですw
亡くなったと言えば、デヴィッド・ボウイの名曲『Starman』が途中で流れますね。宇宙の男って意味なので、この映画にはぴったりでしたが、監督の意図もあったのでしょうか。
脚本家は、『クローバーフィールド HAKAISHA』や『ワールドウォーZ』、『キャビン』、ドラマ『LOST』シリーズで有名なドリュー・ゴダードです。
NASAでも14日間ミッション”HERA”がある!
今作は、リドリー・スコット自身が現実に即したものにしたいということで、NASAの全面支援となり、NASAの科学ミッション本部の惑星科学部長であるジェームズ・L・グリーンによるチームが協力に入りました。スゴイ、、、
NASAといえば、実はHERA(Human Exploration Research Analog)という環境で、14日間を過ごすというミッションもあります。実際にNASAの人間が火星に置いて行かれたら同じようなことができるのかも。。。しれない。いやぁ、過酷すぎるミッションや。
本作の主人公・宇宙飛行士のマーク・ワトニーを演じるのはマット・デイモン。一人しかいないシーンは名演技と感じるものが多かったですね。アカデミー賞主演男優賞も受賞しています。
※マット・デイモンといえば、2022年1月14日に彼が主演の新作『スティルウォーター』が公開されましたね!
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そんな宇宙飛行士のマーク・ワトニー、彼は火星への有人探査計画であるアレス3に参加していました。他のクルーとあわせて合計6名で探査任務を行っているところ、突然砂嵐がやってきます。
宇宙船ヘルメス号に戻ろうとしたとき、アンテナがワトニーに直撃して、彼はどこかへ飛ばされてしまいます。なんとか探そうとする船長ですが、見つからないのでそのままロケットへ。
と、ここまで観ていると、普通の映画では、モブキャラが一人死んで、残った5人がどう地球へ還るのか?一人ずつ死んでいく『アポロ13』みたいな映画やな!って思うのですが、実はこの映画ではモブキャラにフォーカスしていくんですよね(モブじゃないわ
火星の重力、大気圧、気温は合ってる?ロケ地はどこ?
この砂嵐、時速120マイル(190km/h)と言われていますが、評論家からすると、火星での風は「そよ風」程度らしく、こんなものは起きないのでは、と言われています。というのも、火星地表の大気圧は地球の100分の1程度らしいです。確かに実際にあんな砂嵐が発生したら、実在するMAVやパスファインダーが吹き飛ばされてしまいますからね。現実ではないことにまずは安心w
実際、原作出版後にも間違いとして指摘されているようですが、これは映画でもとくに修正されず。監督判断で映画に必要と判断したのでしょう。
また、火星という科学考証的な観点でいうと、ほかにも少しあるようです。
例えば、火星の重力は地球の40%以下ですが、彼らは普通に歩いていますよね。これも敢えてスコット監督が決めたことのようです。重い宇宙服だけで十分だろうという判断だったんですね。
気温においても、平均-62 °Cと言われているので、本当はもっと寒いはずです。大気もあまりないですしね。この辺もあまり厳密には描かれていないようですが、映画ストーリー的にそこまで致命的ではないので、目を瞑りましょうw
ちなみにロケ地は、「月の谷」と言われているヨルダンのワディ・ラムです。『アラビアのロレンス』の撮影でも選ばれた地で、どこか火星らしい雰囲気が漂っていますよね。地球らしからぬ、異なる星の砂漠って感じがして結構好きです。
同じく火星もの映画といえば、『テラフォーマーズ』、『ミッション・トゥ・マーズ』、『レッドプラネット』っていうのもありましたね…
置き去りにされるマットデイモン再び…ジャガイモ映画とはw
ということで、「実は生きていました!」っていうワトニーのドラマが始まります。ちなみにマットデイモンが置いて行かれるというシナリオは、『インターステラー』のマン博士にも通ずるものがあるなと思いましたw
普通はアンテナの破片がぶっ刺さったら空気漏れで死んでしまうのですが、彼の場合、アンテナとその周りの血が固まって、なんとか生きていた、というところのよう。鏡を見ながらなにか取り出すシーンは痛々しいですが、その苦痛っぷりがよくわかるシーンです。スコット監督がいじめていますねw
ヘルメス号は既に地球へ経っており、救助隊のようなものが来る見込みもありません。現在がアレス3ですが、次の計画であるアレス4はなんと4年後の予定。
つまり、4年間、一人で生きねばならぬのだ!(*_*)
ちなみに、火星での1日は、1ソルとして数えられており、これは24時間39分35秒です。後に地球側のシーンが描かれる時に、微妙にずらしていく描写がありましたね。
4年生きていくうえで大事になるのはまず食糧。
早速どれくらい残っているのか確認すると、68ソル×6人分=408ソル分=1年半はあることが分かります。
4年に全然足りない!!
ということで、ワトニーは自身が植物学者であることを活かして、火星での農業を始めます。「じゃがいも映画」とまでいわれる所以はここですね笑
排泄物を封しているのはなぜ?水や熱はどう作った?
感謝祭で利用予定だったじゃがいもで大量栽培を行う計画。水については、MAV(火星降下機)に残っていた燃料(ヒドラジン)を利用して実験します。一度は失敗するものの水を創り出すことに成功し、電力についてもRTG(放射性同位体熱電気転換器)と呼ばれるプルトニウムを利用した宇宙用電池を用います。水や熱をつくりだすプロセスは、実際にNASAも適切と判断しているようです。(ちょっと専門用語多いわ…)
火をつくりだすシーンでは、十字架を燃やしていますが、これはアメリカ映画らしからぬ手段ですよね。リドリー・スコットが無神論者であるのも関係しているのかもしれませんが、この描写からもハードSFの魂を感じ取ることができます。つまり、「神に祈ればなんとかなります!」というようなモードに主人公がならず、しっかりと物理学や宇宙工学を意識して生存する、という作品の魂が読み取れるわけです。
ジャガイモの栄養としては、持ってきていた地球の土とクルーたちの排泄物を利用することになります。排泄物が封されていましたが、あれはそのまま火星の表面に落とすと、バクテリアが火星に広まってしまう恐れもあるとして、パックにされているっぽいですよ。
そして、植物には二酸化炭素が必要ですが、これはワトニーがハブで放出しているものを使っています。ハブから離れる際は、MAVの燃料プラントで火星の大気からつくった液体二酸化炭素で代用しています。
ちなみに、ジャガイモだけじゃビタミン大丈夫か?とかツッコミもあると思いますが、原作ではサプリメントがありますので大丈夫でしたw
また、ISSでは「Veggie」(植物栽培実験装置)とよばれるシステムが存在しており、赤、青、緑の光を用いて新鮮な食物を生産しているらしいですよ。去年はスペースサラダをつくったとかでニュースにもなっていましたね。宇宙で栽培した野菜。。。どんな味なのか^^
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意外とコミカル?ビデオ記録によって分かる主人公の感情
前半、このような彼の死闘を、録画カメラを通して語ってくれるので、分かりやすいですよね。「火星よ、植物学の力を思い知るが良い!」とか「〇UCK!」とか独り言でも勿論視聴者へ伝えてくれていますが、『ロビンソンクルーソー』のようなサバイバル映画では基本的に主人公の表情や行動から読みとっていくスタイルですからね。『キャストアウェイ』でいえば、バレーボールと会話し始めるトムハンクスが印象的ですが、あれも一種視聴者へ主人公の気持ちを伝える媒体でもあるわけです。
この映画の賞賛できるポイントは、こういった生存戦略をややコミカルに描いていることです。緊迫感に包まれたサバイバル映画かと思いきや、音楽も陽気なものが流れたり、ワトニーもビデオに向かってちょっとふざけたようなことを言ったり。ちょっとポップに進んでいくあたり、彼のポジティブ思考も感じ取れます。実際のNASA宇宙飛行士がこうなったらきっとこうして冷静に問題を一つずつ解決していくんだろうなって思います。選ばれしプロがパニックになっているようだと現実味がないですよね。
そしてこの映画は、ひたすらワトニーがどう生きるのかを2時間半見るのかと思ったら、NASA側の動きがいい感じに入ってきて結構面白いんですよね。
まず、NASAは、ソーラーパネルが綺麗なことややローバー2が動いていることをを発見し、ワトニーの生存を察知しますが、ただでさえ通信できない上に食糧も尽きるだろうということで、ヘルメス号のクルーには隠されてしまいました。
地球に帰還するまでは、ショックを与えずにいこうというわけですね。。。
この時点で、NASAには二つの考えが存在するようになりました。
NASAのテディVSミッチが現実的でまた高評価!
・リスク回避で物事を進めようという、最高司令官のテディ・サンダーズ
VS
・必ずワトニーを助けようとする、クルー思いなフライトディレクターのミッチ・ヘンダーソン
一見、テディが悪者に見えるんですが、実はそうでないんですよねw
彼はNASAやアメリカという大きな組織の視点で動いている、ある意味で優秀な上層部でしょう。
この対立がまた現実的な口論だったので、批評家たちは好みそうな展開ですね。
ここでヘルメス号クルーを紹介。
・マーク・ワトニー(マット・デイモン):エンジニア兼植物学者
・メリッサ・ルイス( ジェシカ・チャステイン):船長兼地質学者
→実は『インターステラー』にも出演しており、マットデイモンと共に宇宙で再演w
・リック・マルティネス(マイケル・ペーニャ):操縦士
・ベス・ヨハンセン( ケイト・マーラ):システムオペレーター兼原子炉技術者
・クリス・ベック( セバスチャン・スタン):航空宇宙医師兼生物学者
・アレックス・フォーゲル(アクセル・ヘニー):科学者兼天体物理学者
ちなみに、ヘルメス号の白い内装は、『2001年宇宙の旅』のリスペクトとも言われています。たしかに全体的に白いタッチはよく似ています。とはいえ、割とハードSFに寄せている映画では、ほとんど白いような気もしてきた…
さて、火星ではワトニーが過去に送り込まれた無人探査機マーズ・パスファインダーを回収して修理し、通信可能な状態にしました。
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マーズ・パスファインダーって計画?探査機?ローバーは?
マーズ・パスファインダー、これは実在する探査機です。1996年に打ち上げられ、1997年7月4日に火星に着陸しています。1万6000枚の写真と、大量の大気や岩石のデータを送信したということで、火星の研究に大きく貢献しました。古くは水があったと言われるようになったのもこの探査機のおかげです。探査機が着陸した無人基地は「カール・セーガン記念基地」と名付けられています。カール・セーガンといえば映画『コンタクト』で…となると脱線するのでここでw
「マーズ・パスファインダー」って言葉は初耳だったので、最初なにをさしているのかよく分からなかったです笑 おそらく同じように思った方も多いのではないでしょうか。(この後ほかにもアレスとかMAVとかマヌーヴァーとかいろいろ出てきますしねw)
整理しておくと、マーズ・パスファインダーは、火星探査計画のことを指すこともありますし、探査機群の総称として言われることもあります。
さらにややこしいのが、六輪で動く小さな探査車がありますが、あれは「パスファインダー」ではなく、「ローバー」(火星探査車)です。96年には「ソジャーナ」という名前もついています。ローバーを着陸させるためにエアバッグで包んだり、エントリーカプセルでローバーを保護したり、結果大きな風船みたいなものになるのですが、それらをまとめて、「マーズ・パスファインダー」と呼んでいるのです。
なので、
「マーズ・パスファインダー」という火星探査計画に利用した、
「マーズ・パスファインダー」という探査機セットの中に、
「マーズ・ローバー」という六輪の探査車がある、
ということですw
ちょっと最初は分からないですよねw
ただ、劇中のパスファインダーは、実在のデザインとかなり近いものになっているらしいですよ。
また、パスファインダーへ移動する際に、どうやって方向感覚をつかんでいるんだ?という話がありますが、これは、火星の衛星フォボスの動きで東西を見極めているようです。
フォボスという名前、これはギリシャ神話に登場する戦の神「アレス」の子の名前に由来しています。火星は、ローマ神話のマールス(マーズ)から来ているみたいです。
アレス3とか4とは?火星との通信時間22分は正しいのか
アレス、といえば、今回の計画はアレス3と呼ばれていました。
これもちょっと解説しておくと、この物語の設定ではアレス1で人類は火星への有人探査に成功しており、その後、アレス2が進み、今回がアレス3となった、ということです。
そして、この後、脱出で使うのがアレス4ですね。
これらはすべてまとめて「計画」のことを行っています。
地点なのかなにかの装置なのか、この辺も最初の方でしっかり理解しておかないと固有名詞の洪水にさらわれてしまいますw
ということで、NASA側もジェット推進研究所から96年のマーズ・パスファインダーのレプリカを出してきて、16進法でワトニーと交信を始めます。そしてローバーのシステムをハッキングすることで、ようやく文章通信が可能になります。
ただ、通信ってポンポン早くできるものなのか?
地球と火星の距離は近日点と遠日点がありますが、最も近いときでも約5,800万キロ、遠い時は4億キロです。
5,800万キロ、、、!?!?
遠すぎるw
なので、通信にかかる時間は片道で最短4分、最大20分かかるという計算らしいです。映画では、往復22分だったので片道11分といったところでしょうか。理論上は正しい計算という事ですね。
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補給機アイリスはなぜ爆発?中国の太陽神が登場!!
通信もできて、計画も順調に、、、
と思っていたある日、ハブ外層の布の破れから気圧が不安定になる、エアロック事故が発生。
なんと育ててきたジャガイモたちが全滅してしまいます!
なんちゅうこっちゃ!!!
NASAは、食料物資の支援ロケットとして補給機アイリスを予定より早めて打ち上げますが、一部点検を省略したため、空中で爆発してしまいます。ビンセントか誰かが簡潔に説明してくれていましたが、横方向の振動の影響で、キューブ状の食料が液状化してしまったみたいです。それくらい点検しておけ!って思ってしまいますが、ちゃんと試験するの大事ってことですね~
一難去ってまた一難、といった展開でなかなかハラハラしますよね。
この「1つ目の打ち上げが失敗」するという意味では、ハードSFの仲間でもある『コンタクト』のシーンにも似ていますね。ようやく完成したぞー!と思ったら、失敗する…くぅうう
そんなとき、突如中国人が登場!w
なんと、中国国家航天局から援助するという連絡が来たのです!
太陽探査計画で利用する予定だった機密プロジェクトのロケット“太陽神(タイヤン・シェン)”。
なぜ中国?ハリウッドが中国市場狙ったというのは誤解!
ここで多くの方が思ったはず。なぜ中国なのか。
一昔前の映画では日本であったり、宇宙開発で次の候補と言えばロシアだったり。
ハリウッドも中国市場に目が眩んだか、、というレビューもありますが、これは間違いですね。なぜなら原作のWeb小説の時点で中国として登場しているからです。
原作者が中国市場を意識した、というのはあるかもしれませんが、それ以上に「機密プロジェクト」という点と「意外な助っ人」というストーリー観点では、中国が良いと判断したのではないでしょうか。
とはいえ、中国が気前よくロケット提供するのか~?とも思いますよね。
実は原作では取引があります。それは、今回タイヤン・シェンを提供する代わりに、アレス5では中国人宇宙飛行士を入れろ、というもの。アレス4はすでにメンバーが決まっている為、アレス5では中国人を火星に着陸させてくれ、っていうことですね。
実際、エンドロール時に流れる映像では、アレス5にアジア人がうつっています。
映画では露骨にこの取引が描かれることはなかったですが、中国人で間違いないでしょう。
ちなみに、、
2022年6月10日に、中国発のディザスター・アクション映画『クラウディ・マウンテン』が公開されるそうですが、こちらに出演するチェン・シューは、映画『オデッセイ』にも出演しているらしいですよ!
スイングバイを利用したリッチ・パーネル・マヌーバとは?
タイヤン・シェンで救助とするか…
と思っていたところ、リッチ(ドナルド・グローヴァー)という若い科学者が登場。
彼は新たな提案を行います。
その名も、リッチ・パーネル・マヌーバ。
(なんか響きが格好いいww
これは、タイヤン・シェンを食料の供給に使い、ヘルメス号にくっつけたあと、そのままヘルメス号は地球のスイングバイを利用して加速して火星へ向かおうぜ、という計画です(雑w
文字にしてもよくわからないのと、自分も初見ではわかりづらかったのですが、YouTubeに分かりやすくまとめている動画があります。これの3番目がリッチの提案ですね。
しかし、これではヘルメス号のクルーたちにもリスクが出てしまうので、リスク回避思考のテディ・サンダースは反対。アレス3のクルーたちを帰還させることを優先するといいます。
これにより、テディ・サンダースは
・高い確率で1人が死ぬリスク(=ワトニーがほぼ100%死ぬリスク)
・低い確率で6人が死ぬリスク(=クルー5名+ワトニーが全員生きて帰れないかもしれないリスク)
の二つを選ぶことになります。
うぅうむ、どちらも難しい判断だ…
ただ、NASA長官としてここで前者を選ぶのは、当然の判断でしょう。
しかし、ヘルメス号クルーたちは指令に反対し、リッチ・パーネル・マヌーバを実施します。(ミッチ・ヘンダーソン辞任を言い渡される…)
ここ、船長がクルーたちの意見を聞きながらどうするか判断するのがなかなか良いシーンでした。533日間もプラスで宇宙空間にいることでもうすぐ会えると思っていた家族とも会えないこと、往復の間でなにがあるか分からないこと、違反行為で二度と宇宙に戻れないかもしれないこと、軍法会議にかけられるかもしれないこと、、
しかし、それらをすべて踏まえてクルーたちが悩んだ末、ワトニーたちを救いに行くのです。
シャワーを浴びたのはなぜ&どこ?髭をそったのは…?
ちなみに、小説版の方では、もしタイヤン・シェンをちゃんと受け取ることができない場合、船長以外が自殺して食糧を温存するというプランでした。これはなんたる覚悟。置いていった責任感があるとはいえ、生きて帰れるところを助けに行く覚悟がスゴイですね。。
もともとはこのパートや、この後ワトニーがMAVまで旅するところも含める予定だったものの3時間半~4時間になってしまうことから、結構省略しているようです。
ヘルメス号が火星上の軌道に乗る日に合わせて、アレス4のMAVを発射させる必要のあるワトニー。長く滞在したハブに別れを告げるといざ出発。
レビューにいくつか「シャワー浴びたのはどこか」というのがありましたが、あれはこのMAVを出発する前のハブですね。突然シャワーシーンになるので何?となるのですが、ここも省略が原因なのか。それとも、これからの旅路ではシャワー浴びるほど水に余裕がないので、思う存分浴びておこう、といったところでしょうか。
髭をそったのはどこか?という問いもいくつかありましたが、服装とかよくよく考えてみると、移動後のMAVの中なのか?とかあのシーンはちょっとよくわからなかったですね…(っていうか皆さん考察すごすぎるw
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火星上昇機”MAV”とは?現実世界でもこれがキーになる!
このMAVというのも、解説しておくと、Mars Ascent Vehicle(火星上昇機)という小型ロケットになります。火星の重力を振り切って宇宙空間に出るロケットですね。
あれ、映画冒頭でMAV使わなかったっけ???
って思いますが、あれは、今回の計画アレス3におけるMAVです。
次回のアレス4のために、すでにアレス4用のMAVが置いてあったわけです。
その場所がスキャパレリ・クレーターです。
※とはいっても、この映画の設定上、火星に砂嵐が発生するならあのMAVも吹き飛ぶリスクがあるのに設置していることになるが…
この映画公開当初よりも、現在は火星への有人飛行は現実的になっていますよね。2021年2月には、探査車「Perseverance」が火星のジェゼロ・クレーターへ着陸しました。2021年4月には、火星の空を初めて航空機が動力飛行したことも話題になりました。電動小型ヘリコプター「Ingenuity」ですね。
そして、火星からロケット打ち上げを可能にさせるMAVの開発が成功すれば、火星の岩石サンプルも地球へ送ることができるようになります。そういう意味では、今作で登場したMAVは、10年後を捉えた現実的なストーリーの一部を担ったでしょう。
ワトニーが作っていた巨大な風船の意味は?
ワトニーは途中太陽光発電で充電(?)しながら、数日間かけて3,200kmを走破し、無事にアレス4用MAVがあるスキャパレリ・クレーターに到着します。
ここでまた一つ疑問。
陽気な音楽と共にワトニーが巨大な風船をつくっていましたよね。
あれ何だったんだって思いますよねw
まさか祝杯用に風船つくっているわけじゃあるまいし。
ということで原作を調べてみると、あの風船には、移動時に利用する酸素と水を供給するための”ビッグ・スリー”(空気調整器、酸素供給器、水再生器)を積むためだったということです。
原作ではトレーラーと連結しているので、風船の意味が大きいのですが、映画では小さな探査車なので、あの上に風船つけたところであんまり変わらないんじゃ…って感じがします。これは映画化の弊害でしょうか…笑
ビッグスリーをあの運転席に詰め込むことできるのか!?という疑問もありますしね…
船先エアロック400キロを背中で動かせるのか?
続いて、ワトニーへ軽量化の指示が来ます。
いまのMAVのままだとジャンプ力が足りずに、ヘルメス号まで届かないという試算だからです。
ということで、カバー、ハッチ、座席、制御機器、船先エアロックなどすべて取り外していきます。ちなみに「船先エアロックで400キログラム」とか言っていましたが、背中で400キロのもの取れるの?という疑問もあるかもしれません。しかし、ここは火星!重力40%くらい低いので400*40%=160キロになるわけですね。とはいってもまぁまぁ重いけど笑
さあ、いざ地球へ!!
ということで、火星出発前にワトニーから涙が出てきます。
なかなか感動のシーンですよね。
なんだかこれまでポジティブなもう一人の自分で抑えてこんでいた本当の自分が出てきてしまったような、そんな味わいのあるシーンです。
しかし、またトラブルが!
なんと船先を覆っていたビニールみたないのがはがれてしまい、空気抵抗の影響で想定の位置まで来なかったのです。
最後の最後までやりやがって…!!
船長が自らテザー(紐)を使ってワトニーのもとへ向かうもの、届かない!
※『ゼロ・グラビティ』を想起させるシーン!
あ、ここ原作ではスペシャリストのベックがそのまま助けに行くらしいのですが、映画ではドラマチックにするためか、船長になっていましたw
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アイアンマン作戦も原作では無い?70億人が待つ理由は…
あとちょっと、、
届かない、、駄目か!
と思ったところで、アイアンマン作戦始動!
ワトニーは自分の宇宙服に傷を入れると、発散される空気を用いて飛ぼうというのです。そんなうまくいくのかぁあというところですが、観ている感じとても難しそうw
なんとか必死に船長と接触し、最後はくっつくことができました。
宇宙空間ということもあり少しでも油断したら永遠に遥か彼方へ飛ばされてしまう、臨場感あるあるハラハラ映像でした。
ただ、このアイアンマン作戦も、原作では登場しないらしいですねw
無事に助けられたことはアメリカや中国をはじめ全世界が注目していたので、成功したことを聞いて歓喜にあふれる一般ピーポーやNASA、クルーたち。
とはいっても、世界中が見守るってどういうことやっていう気もしますねw
キャッチコピーも「70億人が、彼の還りを待っている。」とありますが、別に彼と地球人類の未来は関係ないので、そこまでして全員注目するのか?とかも思ってしまいましたw
いや、もしかすると70億人が
「ガチのアイアンマンやーーん!!!すげーー!!!地球に戻ってきてくれーー!!」
って思っていたのかもしれぬ。
名言:宇宙はある時点で人間を見はなす。覚悟しておけ
災難続きでしたが一つ一つ解決していくことで、
無事に助かって地球へ戻ってきたワトニー。
公園では、通り過ぎる訓練生たちに敬礼されるほどの重役に。
芽生える双葉をみて「hi, there…」と優しく声をかけるほどに。
NASA教官として、宇宙飛行士訓練生たちに今日も授業のようです。
そこでは、いつだれがワトニーのようになるかわからないので大事にすべきことを話します。そして、「宇宙はある時点で人間を見はなす。覚悟しておけ」という名言を残します。
最後は助かったワトニーですが、それでもそのように思うというのは、過酷な火星生活を送った上での価値観ということです。
何度も死にかけては、困難を打破したワトニーには、宇宙のひとつの法則が見えたのかもしれません。
そんなハードSFでもある人気サバイバル映画『オデッセイ』、今後リアルに火星への有人飛行が話題になるたびに想起される映画となるでしょう。
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