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【ミニ小説】傭兵ジョン・ジョン -浄水施設奪還依頼-

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とある傭兵は、賊により占拠された浄水施設を奪還するよう村人から依頼される。敵は量産人型兵器ArmorFrameを四機保持していた。報酬の為に、傭兵ジョン・ジョンは戦地へ赴く。

 

傭兵ジョン・ジョン -浄水施設奪還依頼-

 炎天下の中、巨大な輸送車のシートに座り、水を飲みながら燃料計を見る。燃料計はあと少しだけ隙間が残っている。

 ふと外に目を向けると自分と同じ傭兵と村人が輸送車の隣で何か話し込んでいた。暫く話した後、傭兵は首を振り輸送車に乗って少々強引に走り去っていった。村人の様子からするにかなり頑張って説得していたようだ。

 自分には関係ないと横のシートに置いてあったタブレットを手に取って物資の目録を確認する。が、すぐに誰かが窓を叩いた。目を向ければ先ほどまで傭兵と話し込んでいた村人だった。手で太陽光から目を守りながらこっちを見ており、外から中が見えないように窓を加工しているからかどこか不安げな顔をしている。

 ため息を一つついて横にあるフルフェイスヘルメットを被り、窓を開ける。砂の混ざった風が運転席に入ってくる。

「なんだ?」

「すみません。つかぬことをお聞きしますが、傭兵の方ですか?」

「そうだ」

 それを聞いた村人の顔に少しだけ笑顔になる。

「実は依頼を受けて欲しいんです」

 そう言って一枚の紙を差し出してきた。受け取ったこちらが読み終わったかも確認することなく村人は話し続ける。

「最近近くの浄水施設を賊が占拠しちゃいましてね。おかげで水が足りず大変なんです。向こうはArmorFrameなんて大層な兵器まで持っていて、どうにもならんのです」

「これに書いてある報酬。ふざけてるわけじゃないよな?」

 村人の顔が途端に曇った。紙の報酬欄には10万グリッドと書いてあるが、これでは多少弾薬を買える程度だ。この金額ではあの傭兵が嫌がるのも無理はない。

 村人は少し黙ってから口を開く。

「村人全員で出し合ったんです。このご時世、お金を稼ぐのも大変でこれ以上は……」

 生活がかかっているのは分かるが、こちらも命を懸ける以上、妥協するにしても限界がある。

「90万グリッド。前金40万」

「90万!? こっちは10万グリッド出すだけでも精一杯ですよ!」

「相手にAFがいるなら安い方だろう。あの傭兵はもっと要求してたんじゃないか?」

 村人はまた黙った。AF、AS乗り傭兵一人につき相場で言えば低くて120万グリッド。そこに作戦内容を加味してさらに高くなる。

 悩んで一切言葉の出ない村人を見てため息をつく。燃料計はすでにMAXを指していた。

「俺はもう行く」

 ハンドル横のボタンを押して給油パイプを切断する。

「30万! 30万でどうです!?」

「話にならん」

 ボタンを押して窓を閉める。

 扉を叩く音を無視してエンジンをかける。

「分かりました! 90万出します! だから少しだけ待ってください」

 エンジンはそのままに少しだけ窓を開ける。

「前金40万グリッド」

「20万でお願いします。残り70万グリッドは絶対に払います!」

 前金20万か。問題は無いが。

「払えるんだな?」

「払います。集めるので今日は待ってください」

 窓を全開まで開けて水の入ったボトルを差し出す。

「今日一日だけ待つ。だが待つのもタダじゃない。水をくれ」

 荒廃したこの世界では一か所に留まるのも大変だ。特に放浪している傭兵は。

「分かりました。名前は?」

「ジョン・ドウでいい」

******

 

 一日かけてかき集めた前金を貰ってすぐに偵察に向かう。

 小高い丘の上でヘルメットに付けたスコープを下げ、浄水施設を見る。村人の情報通り量産人型兵器ArmorFrameが四機確認できた。他はキャノンタンク四機、ミサイルタンク一機。AF三機はAR(アサルトライフル)を二丁、一機はARと盾を装備している。

 一機ずつタグをつけてヘルメットに情報を入れる。

「どうですかね?」

 後ろに立つ村人が不安そうに問いかけてくる。

「はぁ……何度ため息をつけばいいんだ。前金15万グリッドは貰った。後払いの75万グリッドはちゃんと用意してくれ」

「もちろんです」

「少しでも報酬を渋ったらお前か他の奴が死ぬ。覚えておけ」

「は、はい」

「すぐに終わる。離れて待ってろ」

 スコープを上げて後ろに止めている輸送車に向かう。荷台にある高性能人型兵器ArmorSourceは輸送車の運転席とは逆の方向を向いて固定されており、右腕にAR、左腕にレールガンを持ち、背中には六連装ミサイルと、レールガンと持ち返るためのARが懸架されている。

 梯子を上って頭部後方にある重たいハッチを開けて飛び込む。片側三枚あるペダルを確認して足を置き、頭上にあるトップコンソールからオートスタートアップボタンを押す。ラムダエンジンの稼働音と共に各画面が立ち上がり、機内が照らされる。

<OS:Focus3 ver.8.234>

<Mode:Battle Red Division2>

<Cont:Right Maneuver.Left Fire>

 左側面にある状態灯(ステータスライト)を見て起動を確認し、二つのFA(フルオートマチック)レバーを掴む。

 レバーを少し回してペダルを軽く踏む。機体がゆっくりと歩き、輸送車から離れる。後方ディスプレイを確認して問題ない距離にあると確認する。

「よし」

 背部、脚部のブースターが火を噴き加速、砂を吹き上げて丘を駆けあがる。体が後方に押さえつけられ、締め付けられる。

 画面に映った砂山が下方へ消えて浄水施設が映った。一台のミサイルタンクに視線を向けるとアイトラッキングによってロックオンされ、Lの文字がついた照準が自動的に向けられる。右手はFA レバーを握ったまま、左手は握っていたFAレバーの後方にあるSA(セミオートマチック)レバーを握る。圧力センサーが握られたことを感知してディスプレイに映った照準が形を変えた。SAレバーで手動補正を行い引き金を引く。

 左腕に保持されたレールガンが火花を散らし半秒の時間を置いて爆音が響く。音速を遥かに超えた金属杭がミサイルタンクを貫通、金属杭は地面に衝突し大量の砂を巻き上げた。すぐに敵AFに視線を映して引き金を引く。AFは動き出していたものの、まだ速度が出ておらず金属杭がコックピットを貫く。

 キャノンタンクが砲塔をこちらに向け、敵AFが本格的に動き出す。二機は真っすぐこちらに直進し、一機は左へ。キャノンタンクは動かない。

 サイドコンソール左側のLHW(レフトハンドウェポン)切替ボタンを押すと機体左肩から伸びたサブアームがレールガンを取り上げて格納、懸架されていたARを持ってきた。機体は自動でそのグリップを握る。

 左手をFAレバーに戻してレバーのボタンを押し、続けてペダル踏む。

 敵AFの弾道予測に対して反射的に回避機動を取る。戦場を右へ左へと動きながら盾持ちAFの一機に視線を向けて引き金を引く。右腕のARが火を噴き、薬莢が撒かれる。AFが盾で銃弾を防いでいるとそのAF追い越して別のAFが前に出た。同時に左からロックオン警告の音が鳴る。キャノンタンクの弾道予測も二本表示。

 ブースターが向きを変え右方向に推力が発生、前方二機を中心に機体が弧を描くと同時に後方を銃弾が、すぐ左を砲弾が通り抜ける。ASとAFの性能は比べ物にならなず相手にすらならない。

 視線を前に出てきたAFに向けてロックオンし、レバーのボタンを押して固定。すぐに視線をAF達の後ろにいたキャノンタンクへと向ける。L付きの照準がAF側面に張り付き、R付きの照準がキャノンタンクに向く。ARが火を噴き、AF側面とキャノンタンクに穴を開けながら滑る。AFとキャノンタンクが一瞬にして爆炎を上げた。

 盾持ちAFの向こうに左から回ろうとしていたもう一機のAFが見えた。ブースターを小刻みに吹かし、こっちを向こうと旋回し始めた盾持ちAFの背後に右から回り込みながら左旋回、近距離まで一気に近づく。ロックオン警告の音が響くが、味方の近くにいる敵を撃ってきたりはしないだろう。

 右のARを盾持ちAFのコックピットに向け、左のARをキャノンタンクに向けて撃ちまくる。盾持ちAFは至近距離からの射撃に耐えられず装甲が破損、内部まで貫通した。パイロットは即死だろう。キャノンタンクも爆炎を上げる。

 レバーを回し、ボタンを押してペダルを踏む。機体が飛び上がってAFを引き離しキャノンタンク2機の残る場所へと接近する。

 AFのいる方向から弾道予測を示す音が鳴った。左へ急加速し下降しながらキャノンタンク2機をロックオン。背後からの弾丸は空を切り、こちらの弾丸はキャノンタンクへと撃ち込まれる。

「あと一機」

 速度そのままにブースターを吹かして調整、浅い角度で着地する。地面を滑りながらAFへと向き直る。再度飛び上がって空中で左右に動き銃弾を回避しながら接近。“推進器負荷高”の警告灯(コーションライト)が光るが、特に問題ではない。

 AR二丁がAFに向かって火を噴く。

******

 

 輸送車荷台にあるディスプレイで積まれたASの固定状況を確認する。ついでに消費した弾薬の量が反映された目録も。

 開放された荷台に一人の男が小さなケースを持って入ってきた。

「ジョンさん、ありがとうございます」

 入ってきたのは依頼を出した村人。

「それが報酬?」

「はい。確認を頼んでも?」

 ケースを受け取ってテーブルに置く。二つの留め具を弾いて開けてみれば金で出来たグリッドが並んでいる。

「10万で精一杯とか言っていたが、良く集めたな」

「ハハハ……」

 顔は笑っているが明らかに気力が無い。まぁ、報酬を払ったなら出所はどうでもいい。

 ケースを近くの空いた棚に入れて固定する。

「近くに弾売ってそうな場所はあるか?」

「いや、私にはさっぱり」

「そうか」

 村人と別れて運転席へと座りエンジンをかけて一度だけ浄水施設を見る。見えるだけでも六人が点検している最中だった。暫くは問題ないだろう。

 アクセルを踏み込んで道の無い砂漠を進む。片手に地図を広げてそこに描かれた点の一つに視線を移す。傭兵仲間から聞いた稼げそうな場所だ。

 

 

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