押井守『攻殻機動隊』のハリウッド実写版『ゴースト・イン・ザ・シェル』をネタバレ感想&徹底考察!ひどい?押井版との違いは?
海外での反応や評価は?ゴーストの意味、哲学的なメッセージ、スカヨハ&ビートたけし出演、日本で受けた理由ふくめ徹底解説します!
いざ、SFの世界へ…!
ゴースト・イン・ザ・シェル のネタバレ感想・考察・徹底解説 (Ryo)
本日は、最近4Kリマスターでも劇場公開があり話題を呼んだ『攻殻機動隊』の実写映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』についてネタバレ感想・徹底考察します!
ジャパニメーションの傑作と言われた押井版『攻殻機動隊』をハリウッド実写化したのが、2017年。
Rotten Tomatoesで支持率43%。
アメリカでの興行収入はボロボロだったと評判。。。
海外での評価は低いが、日本では高い?
これはアニメからの実写化の中ではヒットした作品なのか?
最近、オリンピックがありましたが、柔道女子ではなんと『攻殻機動隊』の有名な音楽も流れましたね!思い出した方も多いのでは!?
14項目でネタバレ徹底解説します!!
- ハリウッドの実写化、世界では不評だが日本では悪くない?!
- マトリックスやアバターに影響!ただのジャパニメーションじゃない!
- 失敗が定番のアニメ実写化。ドラゴンボールみたいになるんじゃ?w
- 日本ではそこまで評価落ちなかった4つのポイントとは
- 理由①:攻殻ってそもそも別世界ありじゃん?
- 理由②:原作愛だ!こんなに再現してくれるなんて最高!
- 理由③:日本じゃ実現ムリw ハリウッドの最新技術で見れる!
- 理由④:全身義体なんだから、白人スカヨハでもええやん?
- 実写だからこそ…草薙素子のキャラ変にも理由があった!
- 気になりすぎるビートたけしw 実は監督の強いお願い!?
- アウトレイジやんw だいぶ荒くなった荒巻課長。
- 哲学的要素はどこまで受け継いだ?徹底考察!
- 「人と機械」の違いから、「自他」の違いに移行した哲学
- 何をもって「貴方」であり、何をもって「自分」?
ハリウッドの実写化、世界では不評だが日本では悪くない?!
さて、色々と賛否両論のハリウッド実写版の『ゴースト・イン・ザ・シェル』ですが、今作は、1989年に連載が開始された士郎正宗の漫画『攻殻機動隊』を1995年に押井守監督による映画化した『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』がオリジナルとなっています。
公開は2017年でしたが、実は、2008年からアメリカでは動きがありました。2008年にスピルバーグ監督率いるドリームワークスが実写化権を得たのですが、それから脚本家が何度も変わったりいろいろあり、イギリス人監督であるルパート・サンダースに決まってからようやく公開となったのです。
サンダース監督の攻殻作品への愛とリスペクトは後述しますが、公開された現地のアメリカでは、あまり人気は高くないよう。対して、日本では割と許容範囲or評価高いというイメージです。なぜそうなったのか、詳しく考察していこうと思います。
一言で総括するなら、
原作と比較すると、外見(シェル)はだいぶ違うが、魂(ゴースト)は受け継いでくれた、
ということかと思います!
※総括できてるのかこれw
多くの原作ファンが主張するように、確かにアニメ映画とはストーリーがだいぶ違いますし、細かいところを指摘すれば沢山出てくるかと思いますが、今作はそもそも押井守が「好きにつくってよい」とお墨付きでサンダースにハリウッド化を許しているということを踏まえるべきですね。原作に忠実に再現してくれ!ってオーダーしてあれが出てきたら、それは確かに不満たらたらであるべきですが、今回はそういった依頼は無いですからね。
そもそも、原作を破壊して新たなものを創造、という意味合いでハリウッド化されているものなので、そこを念頭に置くと僕は結構良い作品なのではないかなと思います。
マトリックスやアバターに影響!ただのジャパニメーションじゃない!
まずは、押井版アニメ映画について。
実は、”GitS(ゴースト・イン・ザ・シェルの略)”として、アメリカのみならず世界でかなり親しまれている人気作品でもあります。
押井版映画は、1996年にアメリカでビルボード誌のビデオ週間売上ランキングで1位。
なんと全世界でのビデオ・DVDの売上が130万本を超えているのです!!!
ス、スゴイ!!!
いやいや、日本のアニメ、”Japanimation”をなめてもらってはこまるぞ!!!
そんなの当たり前でしょ!
と思うかもしれませんが、実は、アメリカではもっと大きな意味合いがあるのです。
それは、今年末に公開予定のマトリックス続編『マトリックス レザレクションズ』がつくられるまでになった人気シリーズ『マトリックス』原作者のウォシャウスキー姉妹にも影響を与えた作品だからです。
確かに、仮想と現実をテーマにしている部分や後頭部のプラグを挿す設定、戦闘シーンの描写など思い当たる『マトリックス』との類似部分は多いですよね。
▼攻殻との共通点多し!!『マトリックス』第1作目のネタバレ考察コラムはこちら!
それだけではありません!
ジェームズ・キャメロンも大絶賛であり、「大人のSFに刺激を受けた。素晴らしい作品だと思う。いろんな点で最高」とまで公言。その後の『アバター』にも影響を与えたといいます。
ただの日本アニメ映画じゃなかった..めちゃスゴイやんか!!
つまり、ハリウッド映画の巨匠にも影響を与えている作品という意味でも、非常に大きな存在なわけですね。
ちなみに、押井版攻殻の続編である『イノセンス』(2004年)は、日本SF大賞のみならず、日本のアニメーション初の「カンヌ国際映画祭」コンペティション部門選出作品でもあります。2008年にリニューアル版『攻殻機動隊2.0』が公開されたり、その後も別世界というテーマで多くの映画やアニメシリーズとなり人気の地位を不動のものとしました。
※イノセンス、もともとのタイトルは『攻殻機動隊2』だったそう…確かに一見関係ないようにみえるんだよなぁw
失敗が定番のアニメ実写化。ドラゴンボールみたいになるんじゃ?w
海外でも名作と言われたそんな押井版攻殻の実写化。
当時は非常に期待の声が高まった一方、「どうせ。。」という声も多かったですよね。
というのも、アニメの実写化で成功したと言われるものってあまりないんですよ。
典型的な失敗例は実写版ドラゴンボールですw
皆さんは観ましたかね?(いや、ひどすぎて途中でやめてしまったか…)
学生のころ見ましたが、学生目線でさえ、「なんだありゃ」という感想でしたねw
あまりにもクレームが多すぎて、脚本家が謝罪文的なものでメンタルが憂鬱になったことを明かしたくらいに、ヤバい実写化映画として知られているので、僕も堂々とこき下ろしてます↑w
また、日本が実写化したアニメとしても、『GANTZ』『進撃の巨人』『テラフォーマーズ』などありますが、どれもヒットせず。というのも、日本で実写化するとキャストが有名タレントや人気アイドルになるので、どうも一般視聴者受け(=興行収入!?)を狙っているとしか思えず、ファンからすると好印象にならないんですよね。何度も同じ過ちを繰り返しているわが国日本…。
ただ、ゲームやラノベからのハリウッド実写化としては、いくつか成功例があるといえます。
『オール・ユー・ニード・イズ・キル』や『トランスフォーマー』シリーズ、『バイオハザード』シリーズ、モンスターバースとして人気ユニバースとなった『ゴジラ』映画(エメゴジじゃない方w)などは、人気でも割と人気が高いです。
日本ではそこまで評価落ちなかった4つのポイントとは
なので、やっぱり前評判は、、、
え、神アニメの実写化?
ハリウッドがやったってそんなの絶対駄目よ。。。
という心配(もはや諦め笑)の声が多かったんですね。
実際、原作のオールドファンからはやっぱり鑑賞後に批判が殺到しました。
ファンが多い海外でも、こんなのは攻殻じゃないという評価が多かったです。
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日本でもやっぱ。。。
と思ったら、実は意外と悪くない評価なんです!!!
おおっ!?!?
なぜか、それは以下の点に要約できると思います。解説していきます。
①(実写化ひどいという期待値だったが)思っていたより良かったわw
しかも、もともと攻殻って別世界の映画やアニメも多いし、これはこれで別設定で良くない?
② 原作愛めっちゃ感じる!あのシーンもこのシーンも原作のオマージュだ!
③ 映像やビジュアルがハリウッドクオリティ!これは日本じゃできんw
④ 白人が主人公?え、もともと義体人間なんだからええやん!
それではまず①からいきましょう。
理由①:攻殻ってそもそも別世界ありじゃん?
先程述べたように、実写化失敗が続き、そもそも社会的に期待値が低かったのは大きいと思います。特に日本国内で話題沸騰のアニメが映画化されたら大体駄目でしょ、みたいな雰囲気があった中だったので、あまりハードルを上げすぎずに見れたのはあると思うんですよね。
また、ファンなら間違いなくこれまでの攻殻シリーズすべてを見ていると思います。
見ているからこその反対意見もあるのでしょうが、一方で、実は攻殻ならではの「セーフティネット」があったといえます。
それは、『STAND ALONE COMPLEX』や『S.A.C.』シリーズに見られるような、
押井版攻殻とは別世界の攻殻だってある
という大前提があったからだと思います。
実際、これらのTVシリーズでは、主人公である草薙素子が人形使いに会わなかった場合の世界を描いており、ある意味パラレルワールド的な世界観があります。
ということは、そもそも攻殻というアニメ自体にそういう「別世界」があるんだから、ハリウッド映画でちょっと原作と違うからってそんな喚かなくてもよくない?っていう反応も自然だといえます。
これがまだ、押井版攻殻の原作ハリウッド化!という名目であれば、ちょっと残念な点はありますが、そもそも、押井守も、今回はサンダース監督に以下のように伝えてます。
「背景やキャラクターなどはオリジナルに囚われず、自分のバージョンを作り上げればいいんだ」
「好きなものを取り入れればいい。好きなことをすればいい。でもオリジナルな作品をつくれ」
つまり、あの95年の神映画をつくった張本人でさえ、そういう前提で伝えているということから、監督たちも「好きで別バージョンをつくった」という背景があるという意味です。
極論、もっと原作からかけ離れたストーリーにもできたわけですね。
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サンダース監督は、今回の映画は、今までの攻殻シリーズよりも一番分かりやすいものを意識したとのことで、まだ攻殻を知らない初心者でも楽しめる内容を心がけていたのです。
なので、押井版のような哲学的な要素から受ける映画ではなく、一般人が面白く楽しめるようなハリウッド的作風に仕上げたのです。
理由②:原作愛だ!こんなに再現してくれるなんて最高!
そんなサンダース監督、実は原作愛が非常に強い方です。
これが、2点目の成功要因かなとも思うのですが、節々に攻殻愛を示しているので、原作ファンは「多少ストーリー違っても、あんな名シーンを詰め込んでくれるなんてこれは嬉しい!」という気持ちになったのではないでしょうか。
監督は、「20年ほど前に初めて見て、哲学的なテーマやキャラクター、世界観、バイオレンス描写の美しさに打ちのめされた」と語る攻殻映画の根っからの大ファンです。なので、むしろあの哲学的な要素は大好きな方ですが、今回は「敢えて」そういうメッセージ性を薄くしているのです。
それは『攻殻』をもっと世界に広めたいという愛情ゆえ、ともいえませんか?
彼は、リドリー・スコット監督の作品が大好きなので、『ブレードランナー』や『エイリアン2』、また、『2001年宇宙の旅』を模範や参考にしているところも多いですね。これも、彼が「自分のバージョン」をつくるために参考にしたという意味で解釈すると、実に誉れ高い作品をモデルにしてくれたなとも思います。
※街並みや芸者広告のあたりは『ブレードランナー』に確かに近いですよね
サンダース監督のこのような気持ちを分かりやすく示した発言をあげます。
もとの作品が偉大すぎると、それを実写化するときに何を取り入れるかを考えるのはすごく難しいんだ。オリジナルをそのまま実写にしてもうまくいくはずがないし、アニメーションであるからこそうまくいく表現というのもある。押井守監督からは「好きなものを取り入れればいい。好きなことをすればいい。でもオリジナルな作品をつくれ」と言われたよ。原作のテーマや作品の魂は残しつつも、より多くの人々に向けた作品であることは、この作品の特徴だね。
引用:オリジナルであれ:ルパート・サンダース 「攻殻機動隊」をめぐる5つの考察
そして、総括としても述べましたが、作品全体に通底するテーマについても「アイデンティティの追求」という意味では同じです。最も、人間生命全体のアイデンティティか、草薙素子という人間のアイデンティティか、そこで分かれるものはあるにせよ、根底にあるメッセージは同じで「なにが人を人たらしめるのか?」という点です。
この辺の哲学系は後述するとして、サンダース監督の作品の愛を実際にあげてみましょう。
作中で、いくつも95年映画の名シーンを再現しています。
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・冒頭で、ビルの屋上から飛び降りて光学迷彩になる少佐のシーン
・雑居ビル群を背景に、記憶操作された男と光学迷彩を使って闘うシーン
・バトーと船の上で語りあうシーン
・鞄が銃に変化するシーン
・銃撃から柱の陰に隠れるシーン、その時に崩壊される建物のシーン
・多脚戦車(四足戦車)の砲塔の扉を引っぺがして、自分の腕で千切れるシーン
※『攻殻機動隊S.A.C.』シリーズに登場する思考戦車タチコマって人気ですよねw
その他にも、少佐の部屋、バトーと犬、清掃車、上空の飛行機などなど、細かいシーンでおおくのオマージュを取り入れていることが分かります。
※ちなみに、人形使いの代わりにクゼヒデオが登場していますが、彼は『2nd GIG』で登場
理由③:日本じゃ実現ムリw ハリウッドの最新技術で見れる!
こんなにも、ハリウッドクオリティの最新技術で再現されると、多くの原作ファンは嬉しいと思うはずです。逆に違うストーリーでよくここまで集められたなーと思いますよねw
※悪くいえば、大好きなシーンを無理やりくっつけたとも解釈できますが、サンダース監督の愛情を考えるにあまりそれは考えられないかなと…
つまり、ストーリーは多少改変があったので意見が分かれるにせよ、ビジュアル的にはかなり多くのファンがハマったのでは?と思える仕上げになっているわけです。
特に、光学迷彩や激しい戦闘シーンは、多くの方が批評しているように「日本の実写化では、実現できなかったレベル」という意見があるのも頷けます。
製作費も10倍くらいは違うだろうと思いますし、人情ものの日本映画よりアクションや迫力映像に重きを置いてきたハリウッドでの経験値は、そう簡単には乗り越えられないものがあります。
他にも、町のビジュアルなんか非常にいいなぁと個人的には思いました。
こちらは原作のオマージュというより、改良した感じがありましたよね。
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中国×日本?いや、香港を思わせる多国籍な都市の街並み。
近未来らしい最先端技術(ホログラム?)がある一方、廃れたスラム街やマーケットもあり、この辺の融合具合は非常に好きです。
ただ、原作は当時95年だったので、あくまで「当時の最先端」。
2017年今作では、ホログラムのような「今の最先端」が映し出されており、時代を加味した改変かなと思います。ちょっといつでもどこでも監視されている感じは、まるでジョージ・オーウェルの「1984年」に登場するビッグ・ブラザーも髣髴とさせるディストピア世界です。
勿論、『ブレードランナー』の影響があるとは思いますが。
※一部からは『ブレードランナー』のアニメ化とまで言われるゆえんに…笑
キャスト陣も、日本では有名タレントやアイドルを起用する傾向があるのに対し、超有名女優スカーレット・ヨハンソンを主役に抜擢するあたりは、日本ではおそらく実現できない点です。
理由④:全身義体なんだから、白人スカヨハでもええやん?
さて、続けてそのスカヨハについてですが、こちらも海外では不評だった一方、日本では低評価にならなかった理由があると思っています。
皆さんご存じの通り、日本人役の草薙素子を、バリバリの白人であるスカーレット・ヨハンソンが演じたことに、公開前から「ホワイトウォッシング」ではないかと批判が多かったのです。
スカーレット・ヨハンソンといえば、『アイアンマン2』『アベンジャーズ』シリーズなどで絶大な人気を誇り、なんと、2018年と2019年に世界で最も稼いだ女優。出演した作品は全世界で143億ドル以上の興行収入、歴代9位の興行収入を誇るスターです。
Paramount Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ
え、やばくないですか!?!?!?w
押井守も「スカーレット・ヨハンソンの演技力が凄かった。少佐役は彼女しかいないだろう」と言っているくらいに高評価。
しかし、素子の母親役である桃井かおりがバリバリの日本人なのに対し、なんで娘役の素子が白人なんだ!これはどう考えても、ホワイトウォッシングじゃないか!
その意見もわかります。
しかし、日本では割と好意的に受けたとめられたのは、ここにも、攻殻ならではの「セーフティネット」があったといえます。
それは、
「そもそも素子って全身義体なんだから、ルックスが白人でもなんでもよくない?」
という反応です。
確かに。
素子という名を母親から知る前は、ミラ・キリアンという名前で登場していますが、実際この名前も義体化された時につけられた名前。サイボーグ化されたときに白人になったのならば、むしろ名前も白人らしく当たり前ですよね。あれで「草薙素子です」と言われたほうが違和感w
この映画は、素子の記憶が書き換えられていたことがオチになるのですが、そもそも彼女は事故によって脳を白人の義体に移植されているので、元々の少佐は日本人だったと言われてもまったくおかしいとは思えません。ちゃんとストーリー見ずに「え、え、え、アジア人じゃないやん、だめやんこれ!」って見切り発車で言いたく気持ちも分かるのですが、今回の攻殻世界観ならではの思いも考えると、実は何もおかしくないですよね。
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実際、サンダース監督は、全身義体はアニメであれば面白く観れるが、映画でやれば観客と距離が生まれると考えていたそうです。確かに感情移入できない機械的な主人公になりますし、実写化する以上は、多少人間らしさがアニメよりは必要になるでしょう。
そんな思いもあって、原作より温かみや迷いがあるキャラクターにもなっています。
実写だからこそ…草薙素子のキャラ変にも理由があった!
どちらかというと、日本では、「こんな不安的なキャラじゃない!」「もっと孤軍奮闘しているのが素子だ!」という意見が多いのですが、 サンダース監督の思いを考えると納得できる点もあると思うんですよね。意図して人間味あるキャラクターにしたわけなので。
あのアニメ映画をそのまま実写化したら、確かに機械的に演じる女優さんが主人公となるので、実写版なのにどこかリアルさがないという評価になることは目に見えています。今回は攻殻入門バージョンでつくった背景も踏まえると、個人的には今作の素子もアリなんじゃないかなと。
ただ、ちょっと「相手の電脳に入り込む」という得意技が原作より少なく感じる点もあります。そこは維持したままでも問題なかったはずなので、もう少しあった方が攻殻らしさも増して良かったのかなとは共感しますw
ま、結論、個人的にはスカヨハで良かったのではないかと思います。というより、日本映画でつくったら一生スカヨハレベルの女優なんて配役されないので、むしろ感謝すべし…
製作総指揮のProductionI.Gの石川光久社長も、以下のインタビューでこのように答えています。
実写版の攻殻が日本発でなくて良かったと思います。 一言で言えば、日本で作っていたら少佐役はスカーレット・ヨハンソンにはならなかった。これに尽きますね。
参考:「攻殻の実写化、日本発じゃなくて良かった」Production I.G 石川社長インタビュー。『ゴースト・イン・ザ・シェル』製作総指揮が語る真意は
気になりすぎるビートたけしw 実は監督の強いお願い!?
キャストの話になったので、お次は、皆さんがおそらく気になったであろう「ビートたけし」出演についてw
割と人気が高いと公安9課の課長である荒巻大輔役。
多くの方は
①なんで荒巻役がビートたけしなの!?
②なんでビートたけしだけ日本語なん!?
という2点を疑問に思ったことでしょうw
僕もですwwwwwww
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こちら、2点両方にこたえるとすると、
・ビートたけしはサンダース監督がなんとか粘って出演してもらったキャスト
という点が理由であるといえるでしょう。
というのも、監督は『戦場のメリークリスマス』や『HANA-BI』といった作品をみて、北野武監督を尊敬しています。そこで、どうしても実写映画にも出てほしいと思っていたのです。
しかし、いざ依頼してみると、多忙を極める北野武のスケジュールでは参加が難しい。
そこで、提示された2日間という日程で、サンダース監督は受け入れたのです。
そう、ビートたけしはたった2日間しか撮影に参加していないのです!
その上、「下手な英語より、日本語でせりふを言いたい」という要望が来たので、監督は受け入れます。こういった背景があるから、彼は日本語のままなのですw
しかし、ここはちょっとなぁと思うところ。
どうせ日本語で進めるなら、せめて「この時代は電脳翻訳機能がある」などと設定でカバーできたのに、そうしない。母親役の桃井かおりは英語頑張っている(登場時はびっくりしました!w)んだから、余計「あ、ビートたけしのごり押しか、これは…」と感じてしまうかと思います。
※演技にはものすごい力を入れていて監督も刺激を受けたらしいですが…
アウトレイジやんw だいぶ荒くなった荒巻課長。
しかも!
なんか原作より冷徹な匂いがするなとおもったら…
原作で一度も銃の発砲なんてしない荒巻が、なんとリボルバーを使って銃撃しまくりぃ!!!
えぇ!?!?!
そんなキャラだったっけか!?
これじゃまるで『アウトレイジ』みたいだ、と言われても仕方ないですよ…
捨て台詞もアウトロー的な怖いオーラぷんぷんで、どうみても『アウトレイジ』ですw
どうみても、ビートたけしですw
※おかげさまで、思考戦車タチコマがコマネチに見えてきます※
監督は北野たけしを大尊敬していたので、どうしても出演させたかった。
そして、彼は、出演における条件として、多くの要望を突き付けて登場。
この「取引」が、今作の荒巻を生んでしまった一番の要因でしょう。
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ちょっとセリフも棒読みっぽく聞こえるところもあるので、個人的にはやっぱり英語にしてほしかったなぁというところではあります。。ビートたけしなぁ。。。(
※そういえば、トグサの扱いはだいぶ雑だった。。。笑
キャストは結構多国籍で、アメリカ人や日本人以外にも、デンマーク、フランス、シンガポール、イギリス、オーストラリアなどとても国際色豊か。この辺は、多国籍な舞台を演出している点として、ナイスチョイスだったのかなと思いますね。
ちなみに、日本語吹き替えの声優は、押井版映画と主要人物は同じになっています!
・田中敦子(草薙素子役)
・大塚明夫(バトー役)
・山寺宏一(トグサ役)
個人的には、最近は声優に関してもただ有名な芸能人や俳優を起用することが多く観られていたので、この人選は良かったのではないかと思いますね。違和感あるかもしれませんが、これはもうファンサービスとして考えなきゃ。
Paramount Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ
哲学的要素はどこまで受け継いだ?徹底考察!
さて、原作との違いや海外での評判を考察しましたが、
やはり一番気になるのは、本作の哲学的なメッセージ。どこまで原作から受け継いでいるのか。
結論、個人的には「物語が問うメッセージ」はうまく受け継いだなと思っています。
まず、そもそも『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』というタイトルは、アーサー・ケストラーの科学哲学に関する評論『The Ghost in the Machine(機械の中の幽霊)』が元々の由来だと言われています。つまり、ゴーストとは、「幽霊」や「魂」、「精神」、といったもののわけですね。
共通して問いかけられているのは、
人を人たらしめるものはゴースト=魂
じゃ、魂ってなにをもって魂っていうの?
という点かと思います。
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魂の器である「体」や「記憶」がなくなったとき、それでも「人」と呼べるのか。
魂のようなものをもった機械は、人と呼べないのか?
そういった問いかけがあります。
しかし、押井版とハリウッド版の決定的な違いの一つに、時代背景があります。
押井守版は95年なので、実はまだインターネットほやほや時代。
日本はインターネット元年とも呼ばれていたそうです。
つまり、当時にとってはネットはまだまだ未知数の世界で、今ほど身近なものでもありませんでした。
デジタル世界のアニメとして有名なデジモンですら99年スタートですからね。
※そう考えると『攻殻機動隊』は、本当に斬新なアイデアを当時編み出したってことだ。凄すぎる。。。
つまり、当時の社会にとっては、インターネットを利用して「人(機械)は何をもって、人(機械)とするか」を問いかけたのが、押井版攻殻でした。電脳が普通になった時、パソコンと同じようにハッキングされる恐れがあるぞという近未来の世界を描いたのです。だからこそ映画の終わりの「ネットは広大だわ」には大きなロマンやリスクを感じさせるものがありました。
そして、ハリウッド版の方はどうかというと、時は2017年で、もう全員がスマホをもってインターネットは親しみぶかい存在になっています。AIや人工知能なんて言葉も普通になってきた時代。さすがに電脳サイボーグまではまだ誕生していませんが、かなり理解しやすい作品になったのは間違いないでしょう。
そこで、ハリウッド版は、インターネットを利用して「自分(人・機械)はなにをもって、自分(人・機械)なのか」を問いかけたのではないか、と思うのです。
「人と機械」の違いから、「自他」の違いに移行した哲学
ん?自分探しがテーマ?そんなのありふれたストーリーじゃないか。
記憶改ざん系でいえば『トータル・リコール』なんて1990年だぞ!と。
そういう声も飛んできそうですが、ただ単に記憶を失った人間が自分の過去を追い求めるわけではないですよね。同時に、機械と人の境界線を問い、インターネットに支配された未来を描き、その上で、そもそも「自分」は、なにをもって「自分」なんですかを問う。
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機械が自分のアイデンティティを追うプロットして有名な『ロボコップ』を例にします。
◆ロボコップ
- 私は誰?→機械?いや、もともと人間だったんだ!→俺はマーフィーっていう警官だった!→うおおおおおおお!!!!
◆ゴースト・イン・ザ・シェル
- 私は誰?→機械?いや、もともと人間だった!→私は素子っていう女性だった!→しかし、何をもって自分なんだろう?記憶が自分を決める?機械かどうか、魂があるかどうかで自分が決まる?記憶を植え込まれた人間だとしても、それは自分じゃないのか?→ううおおお!?
みたいなところかなとw
要は、95年版は、視聴者に向けて
・「ネット(電脳)と人間(脳)が融合した素子って、人?機械?何をもって人?」
と問うているのに対して、ハリウッド版は、視聴者に向けて
・「素子って何をもって素子なんだろうね?貴方自身は何をもって貴方なの?」
という問いかけのように感じるんですよね。
何をもって「貴方」であり、何をもって「自分」?
死を恐れる必要がなくなり、子孫を残せるようになれば、それで「人」なのか。
貴方の記憶が仮に誰かに書き換えられたものだとして、
貴方はそれで「貴方じゃない」と言えるか?
それは科学的にも、倫理的にも、です。
ということで、長くなりましたが、これで終えていきますが、
個人的には、結論、これはこれで面白い映画だったのではないかなと思います!
原作ファンからは怒られそうですが、哲学的なメッセージを込めながら、
原作の数々のシーンを忠実に再現してくれたハリウッド映画はさすがですね!
ぜひ、またハリウッド版をみたら、95年版も見て比較してみてください!
それぞれのいいところが見つかるかもしれません♪
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