本日は、SFサスペンス映画『10 クローバーフィールド・レーン』について考察。斬新な前作の精神的続編と言われる今作、どこにそのDNAがあるのか。
SFや映画好きな方、ぜひこの映画の感想を聞かせてください!
いざ、SFの世界へ…!!
10 クローバーフィールド・レーンのネタバレ感想・考察・徹底解説 (Ryo)
お久しぶりです!!
本日は、2016年アメリカ公開のSFサスペンス映画『10 クローバーフィールド・レーン』について徹底考察します。
2008年公開の映画『クローバーフィールド/HAKAISHA』と同じ地名やモンスター名(?)がついており、続編のような雰囲気満々の映画です。製作も同じく、J・J・エイブラムスで、前作と同様に公開日までに様々な広告や仕掛けをした映画です。エイブラムスは、『スター・ウォーズ フォースの覚醒』で世界的に有名になったほか、アメリカドラマ『LOST』などでミステリアスなストーリーを展開していくことでも人気な方ですね。
また、ストーリーも非常にシンプルです。主人公のミシェルは、恋人のベンと喧嘩をして田舎道を車で走っている間に交通事故にあい、気が付いたら謎のシェルターで監禁されています。シェルターの主は、ハワードというおじさんで、彼によると外の世界は「攻撃を受けた」とのことで有害物質で汚染されているので出ない方が良い、といいます。もう一人、ここへ逃げ込んだエメットという男と奇妙な共同生活が始まるものの、ミシェルはハワードは精神的異常者なのではないかと疑い始め、エメットと共に脱出計画を始める。。。さて、脱出した世界とは――というのが主なあらすじです。
さて、今回も3点に絞って考察してまいります。
①精神的続編…タイトル自体がギミック!?
②ハワードはいいやつだったのか?
③「斬新」を引き継いだ今作が伝えたい「斬新」とは?!
精神的続編…タイトル自体がギミック!?
なんといっても、多くの映画ファンがここに驚いたはずです。
「クローバーフィールド」という名前があるので、これは続編だと思ってしまいます。
しかし、エイブラムスは「前作の正当な続編ではない」と言いつつも「血のつながった映画」とする、精神的続編だというのです。
映画公開当初は、これに対して賛否別れたといいます。キャッチコピーも「奴らは あらゆる フォームで やってくる」なんて書いてあるので、どう見ても続編じゃないか!と突っ込みをいれたくなります。ただし、実際は直接的なつながりはない。うーん、どっちなんだ!という感じですよね。笑
まだ、ターミネーターシリーズのようにタイムラインが複雑な映画で「正当な続編」「パラレルワールドの世界」などと言われるのは納得できるのですが、こういった類のSF映画でそんなことあるのか~!と思ってしまう人は多いのかなと思います。
ただし、僕はここにこそこの作品の見どころがあると思っています。
というのは、これ、タイトル自体が伏線なわけですよね。
日本で流行っている某アニメと似ていて、最後になってきて「え、タイトルの意味はそういうことだったのか」と頷ける内容なわけです。
特に、今回はずっと地下室で3人が極限の心理状態を生きていくシーンが続きます。ここらへんはまさにホラー映画のように怖いのですが、なぜ観客もミシェルと一緒に「外に出たら危ない」と思っているのかといえば、それは観客には「前作」というミスリードが勝手に入っているからです。
これは実に巧妙なギミックだなと思うのです。
要は、「スターウォーズ1」を観た人にとって、「スターウォーズ2」は必ず続編であるという先入観のもと鑑賞します。しかし、実はこれは「2」ではなく「精神的続編」でした、という落ちだとはだれも思わずに見ます。これこそが、この作品の斬新な策略なのです。
エイブラムスには本当に感激を受けます。前作では、ホームビデオを利用してパニックを描くSF映画を創りましたがこれも十分に斬新だったわけです。本作品は、どのような観点で前作の「斬新」を超えるのかと思いきや、「実は直接はつながっていませんでした」が答えという「斬新」さを利用してみせたわけです。いや~さすがですね~!!
Paramount Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ
実際、映画終盤でミシェルはハワードを出し抜いてシェルターから脱出しますが、空気は汚染されていなかったのです。この「え、まじか!?」という驚きが非常に好きです。
なんだ、ハワードが本当に異常者だったのか。。。タイトルは伏線だったのか。。。
と思わせたところで、
エイリアン登場!!
ただし、このエイリアン、前回のクローバーフィールドのモンスターとは少し違います。
ということは、やはり、核攻撃を受けて汚染された前作の世界観は引き継がれていない、ということになります。
ハワードは本当にただの監禁野郎だったのか?
実際、彼はメーガンという偽りの娘を監禁して殺害していることものちにミシェルとエメットが解き明かしています。
ハワードはいいやつだったのか?
さて、ここですね笑
ハワードは、確かに別の女性も殺害した上に謎の液体で溶かしていますし、作中も高圧的な態度でミシェルとエメットを脅迫しています。また、エメットに関しては、脱出しようとしていたことがばれて拳銃で殺害されてしまいます(突然撃たれたのでかなりびっくりしました。。。笑)。
これは「明らかに異常者だ、ただの監禁好き野郎だ!」と思ってしまう反面、実はいいやつだったのではないか、という推測も可能です。
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どういうことかというと、ハワードはもともと海軍に所属していたことがあり、そこで衛星に関する仕事をしていたといいます。彼はなんらかの事情でそこで「エイリアンから攻撃が来る」ことを予期し、シェルターを創っていたのです。隣人からもバカにされ、孤独に生きるハワードでしたが、彼はそれでも「その日」が来ることを予測していました。
そして、実際にエイリアンによる攻撃・人類による反撃が始まりました。
ハワードの推測は当たったのです。
しかし、ハワードはちょうどその時自分の車と前の車をぶつけてしまい、そこに乗っていたミシェルを助けてあげようとシェルターに避難させてあげます。
ここまで、完全にちゃんとした、良い人なわけです。
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では、彼はいったいどんな時に異常者になってしまうのか?
それは、おそらく彼の創り上げた「世界」へ侵入者が入った時と推測することができます。
彼は自らが創り上げた鉄壁の世界にエメットとミシェルを招き入れたものの、自分がまるで帝王のように思っていたに違いありません。なぜなら、自分がいなければ、そして自分のシェルター(世界)がなければ、彼らはとっくにもともとの世界で死んでいるからです。いや、帝王というよりむしろ神のように思っていたのかもしれません。
しかし、そんな神のことをまるで異常者のように疑うエメットとミシェルに苛立ちを覚えてしまい、高圧的な態度をとるようになったと考えられます。
これは、意外と日常でも見られるシーンではないでしょうか。
人間というのは野生だったころの本能を遺伝子的に受け継いでおり「縄張り意識」なるものが強烈に植え込まれています。なので一度手にした領土や大きくした土地を簡単に誰かにあげる、というのが本能的に難しいようにプログラムされているんですね。生物進化学、心理進化学、とかいいます。
例えば、今日、あなたは気前の良い上司から一軒家を譲り受けたとします。あなたはそのまま一か月間、家族と共にそこで遊び、食べ、寝て、自由に暮らします。しかし、一か月後、見知らぬ男がやってきて「ここはもともと俺のだ、でていけ」と言われても、「いやいや、ここはもうおれらのものだ!お前が出ていけ!」と言いたくなってしまいます。
「そっか、いいよ、出ていくよ」なんて言うように、僕たち人間は出来ていないのです。
ハワードはまさにこの「縄張り意識」を面白く、そしてうまく描いたなと思います。
彼は自らの「領地」に招きいれた人間は、必ず自らのコントロール下にあるものだと錯覚しているのです。これが仮に、シェルターを創る時点から3人で共同で建設しました、ならば、おそらく「おれの土地」という感覚が芽生えないので、ハワードはもっと優しい人間として生き延びることができたと思われます。
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面白い観点だなぁと思います。
結局、ハワードは「いいやつだった」のではないか。ただ単に自分の縄張りを荒らされ、そしてそこの君主である自分を疑われたことに苛立ち、あのような態度をとってしまったのではないか。僕はそう推察しました。
「斬新」を引き継いだ今作が伝えたい「斬新」とは?!
最後に、この映画が伝えたいことを考えます。
まず、このシェルター×3人というシーンが作中の大半を占めます。シェルター内で疑心暗鬼に陥っていく様は、まるでクローズドサークルもののミステリー作品さがならで手に汗握る瞬間の連続です。
しかし、面白いのは、
犯人がいるのか?お互いに疑い合う?という点ではなく、
前作の続編だからやっぱり外は危ないのか?ハワードはただの異常者なのか?という点にあります。
観客はミシェルの立場を応援しつつも、ハワードの立場にも理解を示してしまう、これがまた巧妙な策略です。普通の映画ならば、ハワードおかしいやろ、で終わるものが、前作という名の「壮大な伏線」があることで、ついハワードにも同情してしまうのです。
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そして、この疑心暗鬼に陥った3人の中から、2人が結束して脱出を試みます。ここも、面白いですよね。本当は3人協力してエイリアンと戦うorエイリアンから守るべきところを、なんで人間同士で争っているんだ、と冷静に考えてしまいます。特に、前作で完全にエイリアン打倒に向けて人間が一丸となっていたのを見ていれば、なおさらです。
なんとか外に出れたミシェル。ただし、そこで愕然とします。
なんと、空気は汚染されていないのです!!
ええっーー!?!?Σ(・□・;)
やっぱり前作とつながっているように思わせただけだったのかぁ~!!
と思わせつつ、突如、エイリアンが出現し、彼女を襲撃します。ここで、作中に登場した、皮膚が焼けていた隣人が死んでしまったのは、実は空気汚染によるものではなく、このエイリアンの攻撃によるものだったと推測ができますね。
エイリアンとなんとか戦うミシェル。ハワードから抜け出すときもそうでしたが、どうやらミシェルは戦闘力のポテンシャルが元からかなり高いようです。笑
なんとか逃げ切ろうとしたところ、別の母体(?)のようなものも出てきて、回収しようとしてきます。
※どうして映画に出てくるエイリアンたちはやたら人間を回収したがるのか、これはこれで分析したいですね・・・笑笑
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ミシェルはとっさの判断で火炎瓶を創って「奴」の口に投げ込むと、奴はいったん死に絶えます。その間になんとか車を使って、逃げ、最後は人間とエイリアンが戦っているという「ヒューストン」へ向かいます。
彼女は、最後「バトン・ルージュ」への道を選べば病院があるのでおそらく何もせずに助かったと思います。しかし、彼女は敢えて、まだエイリアンたちと交戦中の「ヒューストン」を選んでいます。
それは、ハワードやエメットたちを助けられなかった罪滅ぼしでしょうか。
または、エイリアンたちをやっつけて自信がわいたのでしょうか。
単なる正義心でしょうか。
監督が第三作に繋げるためのシーンでしょうか?(笑)
明確に描かれていませんが、確実にミシェルという一人の女性は強くなりました。
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僕は、極限状態を生き延びた者は、自身のパワーが強くなっているのではないかなと思います。それは、疑い合うことや信じあうことなどの簡単な関係を超えた、一人の人間としてのタフな生命力の向上ゆえです。
さて、こうして閉鎖環境下の極限状態から外へ抜け出したと思えば、まだ極限状態だったという、このスリルなどんでん返しは非常に好きですし、まだまだ世界は安心できないところでエンディングです。
そして、なんといっても、外の世界を見てから「エイブラムスに騙された!!」と思うのです笑
そういう点が、この映画の「斬新さ」だったのではないか。
僕はそう思います!
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