2005年スピルバーグ版『宇宙戦争』、ネタバレ徹底解説コラムです。ウェルズの原作・53年版との比較、トライポッドの魅力、大阪での打倒方法、血の草の意味、レイチェルたちとの家族愛、ラストの評価などなど18トピックでSF映画考察。気になる方はぜひ!!いざ、SFの世界へ…!!
宇宙戦争のネタバレ感想・考察・徹底解説 (Ryo)
さて、本日は2005年アメリカ公開のSFスペクタクル超大作『宇宙戦争』について徹底考察・解説していきます。
なんで今頃?という感じだと思いますが、先日『シン・宇宙戦争』なるものが公開予定とうかがいまして、ついこちらの映画を思いだしまして。ただ、こちらの映画は、正当な続編やスピルバーグ並みのクオリティかというと、そうでなはさそうで、流行りの『シン』に乗っかったB急映画的な匂いがします。気になる方はぜひ予告編を!
SFの金字塔『宇宙戦争』復活!火星人再襲来/映画『シン・宇宙戦争』予告編
ということで、SF好きな方なら必ず見たことはあるといっても過言ではないSF映画の金字塔『宇宙戦争』ですが、子供の頃に観てトラウマになった方もいれば、大迫力の映画館で鑑賞した記憶が強い強い方、家族愛が深まった映画だななんて方も多いかと思います。
本日は、映画的にどんなところがポイントなのかという観点から、あれはどういう意味だったのか!?等の細かいマニア的な考察観点まで解説していきます!
※ネタバレ無し解説は以前投稿しましたので、まだの方はこちらから!
【宇宙戦争】見どころ解説!地球自体が宇宙では強みだった…!?
- 100年前から語り継がれる名作!?
- 巨額な製作費とスピルバーグ組による最高なSF
- 2005年に示した『侵略する宇宙人』の意味とは
- 「見せない」という最高な演出と裏切り
- 今こそ考える、賛否両論のラスト
- 娯楽のSFから、現実的なSFへ
- 真の恐怖は、敵ではなく群衆だった
- 本当のハリウッド要素は「家族愛」にある
- ヒステリーになる娘、自我に走る息子
- 「血の草」の意味が怖すぎる件
- 大人気!トライポッド君の音がヤバい!
- 空から舞い降りた侵略者
- 機械的×生物的な戦闘機械がたまらない
- 地球の技術発展に応じて、トライポッド様も強化!
- タコ型人間には、合理的な理由があった!
- なぜ、OSAKAではトライポッドが倒せたのか?
- 彼らの目的は何だったの!?
- 謎に包まれていること自体が魅力だった
100年前から語り継がれる名作!?
まず、こちらの作品は皆さんもご存じの通り、近代SFの父H・G・ウェルズによる小説『The War of the Worlds』を映画化したものになっています。ウェルズは他にも、『タイム・マシン』や『透明人間』などが有名ですよね。
こちらの作品、一体いつかと思ったら、なんと1898年なんです!
100年以上も前ってことにびっくりでした。
後述しますが、こんな素晴らしいプロットを100年前に…と感激してしまいます。
原作と違う点もあるらしいので、本考察ではその原作との違いや53年版映画の比較も交えていきますね!
そもそも、この原題ですが、直訳では『世界の戦争』か『世界同士の戦争』になりますよね。つまり、火星(人)と地球(人)という異なる世界の戦いであることを意味しています…というのが通説ではありますが、もっと深い意味もありそうですよね。
それは、「宇宙人」の世界と「微生物」の世界の戦争かもしれません。
「とある生態系」と「とある生態系」の戦い、あるいは、「科学や技術」の世界と「生物や細胞」の世界の戦いかもしれません。
地球の生態系でトップに君臨する人間も、単なる「ひとつの世界」に過ぎず、宇宙という世界でみればゴミみたいな存在(言い過ぎ?)。そんなことを匂わせます。
ウェルズは興味深い題名をつけたものだなと思います。
ちなみに、原作の頃は「火星」は今より謎めいていたので「火星人」で通用したのでしょうが、映画版では「火星」と言及されておらず、「宇宙人」のようです。
H・G・ウェルズといえば、実は『宇宙戦争』の前年1897年に、前日譚にあたる『水晶の卵』という短編を出しています。「明確に同一世界は言われていない」ものの、ロンドンのとある骨董店にあった卵形の水晶のようなもののなかに火星の風景が見えるというお話なのです。逆に火星人からも地球の様子が見えるのだろうという、ちょっと不可思議な話なのですが、『宇宙戦争』の火星人とよく似た形状やトライポッドらしい描写もあるようなので、気になる方はぜひ読んでみるといいかもしれません。
巨額な製作費とスピルバーグ組による最高なSF
こちらの原作は、多くの作品の題材になった作品としても有名です。
後の「火星人」のステレオタイプ(=タコ型人間)をつくったともいわれていますし、映画『インデペンデンス・デイ』に登場するエイリアンの死滅が(自然発生的・意図的の違いはあれど)ウィルスが原因だったこともここに影響を受けているとされています。
宇宙人が機械やロボットに乗って登場!というのも、ここが原点ではないかといわれているらしいです。いわれてみれば、火星人単体で登場でも良いところなのに、トライポッドという戦闘機械に乗って地上を制圧していくのは、なかなか斬新だったのかもしれません。
1953年にも、SF映画の製作者として名高いジョージ・パル監督により映画化されており、こちらもかなり好評だったみたいですね。こちらの監督は『タイムマシン』の映画化も行っています。
今作は2005年にスピルバーグ監督により1億3000万ドルという巨額の製作費をつぎ込んで創られたもの。これは、スピルバーグ作品の中でも『インディ・ジョーンズ4』の次に高い製作費らしく、彼の力の入れようがうかがえます。当時の最新鋭のVFX技術、今みてもまったく色褪せないインパクトを維持しています。
ってか、1億ドルですよ!!(震)
日本映画では気の遠くなるような予算。。。
※「シン・ゴジラ」をドル換算しても1,500万ドルです…
ちなみに、スピルバーグ監督とトム・クルーズは『マイノリティ・リポート』でもコンビを組んでおり、この時も製作費は1億ドル以上!最高なコンビなわけですね。
撮影はヤヌス・カミンスキー・音楽はジョン・ウィリアムズというのも、おなじみのスピルバーグ組です。特に、 ジョン・ウィリアムズは映画音楽界ではトップといっていいほど有名ですよね。僕もサウンドトラックいくつか持ってますが(笑)、本当にその映画のテーマらしい!!って唸る音楽ばかりで天才すぎます!!スターウォーズなんか一番知名度が高いかもしれません。
さて、あと実はナレーションでモーガン・フリーマンが登場しているんですね笑
かなり重役の方をここに持ってきたのも、ラストを知っている方なら、納得できますよね。彼の語り口調はまたなんとも絶妙。温かさや優しさだけではない、渋みや深みも感じます。
子役のダコタ・ファニングも、少しヒステリーすぎてノイズ要素になるという意見があるものの、当時の世間的には天才子役であり、緊迫する地下室シーンで登場するオグルビー演じるティム・ロビンスは『ショーシャンクの空に』の主演俳優として知られており、実は結構豪華キャストです。
2005年に示した『侵略する宇宙人』の意味とは
2005年に製作された、というのも、実は一つポイントです。
その前の2001年9月11日に同時多発テロが発生し、世界を騒がせましたが、この映画はいたるところに9.11の光景を色濃く反映しています。火星人からの攻撃に最初は「テロなの?」といった描写もありますし、突然アメリカ本土が一方的に攻撃された時の「不可抗力」や人間心理を再現しているといえます。映画館でひたすら絶望することしかできないアメリカ人観客を、スピルバーグはまるで透視しているようにも思えます。
『未知との遭遇』や『E.T』でも宇宙人ものを製作してきたスピルバーグですが、今作はちょっと今までと違いました。それは、以前までは『友好的な宇宙人』の映画だったところが、今作では『侵略する宇宙人』の映画という点です。
これも、もしかすると、そういった時代背景が影響しているのかもしれません。
色々と考えが深まるのがこの映画ですよね。
ということで、そんな点も踏まえて、本作の考察に入っていきましょう!!
おそらく、ここに来ている方はSF大好きマニア様だと思いますので、あらすじとかもカット!笑
「見せない」という最高な演出と裏切り
まず、一番の魅力は「見せないSFスペクタクル」という観点でしょう。
これは、おそらくほとんどの映画批評家やSFファンが言及している点ですが、要は「エイリアン、ドカーン!!怖いだろー!!あははは!!」というタイプではなく、姿形が一向に画面には現れないにも関わらず、まるで目の前で戦っているような、非常に怖い緊迫した世界に没入してしまうという意味です。
スピルバーグ監督の「見せない恐怖」は『ジョーズ』にも見られるように、非常に洗練された演出技術が垣間見えます。音楽やカット割りの力もありますが、そもそも「宇宙人」という敵をあまり出さない、戦闘シーンがほとんどない、という演出が巧妙なんです。
この映画、終始ずっと市民(トム・クルーズ)が逃げ惑う映画なんですよね。
米軍兵器とトライポッドによる全面対決!
みたいなシーンはないですし、あったにせよ、画面から意図的に隠しているように感じます。
そこが個人的に好きな演出ポイントでもあります。
TM & (C)2005 Dreamworks L.L.C. (C)2005 Paramount Pictures.
(C)2005 United International Pictures.
『クローバーフィールド』(2008年)のようなPOV視点映画とまではいわずとも、巨大怪獣系の物語を一般ぴーぽー目線で描く作品はいまでこそ多いと思います。しかし、98年の『インデペンデンス・デイ』や『スターウォーズ』シリーズ(ちなみにエピソード3も2005年!)にみられるように、SFバトルものの多くは、ひたすら逃げ惑う市民を描くパニックもの、というよりは、真っ向から戦って敵を退治することでカタルシスを味わうという、勧善懲悪に近い構造のものが一般的だったと思います。
今作はまったく対照的です!
それも、トム・クルーズほどの大俳優がひたすら逃げるだけ。
最後に一矢報いる形で手榴弾を三脚歩行機械トライポッドに突っ込んで爆発させるものの、それ以外、パーフェクトゲームといっていいほど負けっぱなし。逃げっぱなし。やられっぱなし。
これは相当な絶望感や緊迫感、ある意味でリアリティのある映画だったに違いありません。
今こそ考える、賛否両論のラスト
最後は、皆さんもご存じの通り、微生物(原作ではウィルス)によってエイリアンはあっさり死んでしまうので、当時は賛否両論が激しかった作品だと聞きます。
やはり、ハリウッドは夢を売るのが仕事なので、「どうにか地球人や主人公(トム・クルーズ)がやっつけて爽快!」という展開を予想していたのだと思います。題名的にも、まるで「宇宙で戦争するお話」感があるので、原作を知らない方からは多くの不満があったのも当然といえば当然でしょう。それをあの皆大好きスピルバーグに裏切られ、あっさりとしたエンディングに「こんな終わり方あるか!!」と思った観客は少なくなかったはずです。
ParamountPictures/Photofest/MediaVastJapan
しかも、公開前は、マスコミ向け試写回数を大幅に制限し、メディアでの批評を一切禁止するなどの徹底ぶり。もちろんトライポッドや宇宙人を隠す意味、海賊版普及の防止なども目的ではありますが、これも影響して、観客の多くから「こんなもの期待していなかったよ!」「もっと派手に戦ってくれるとか思ったのに!」という意見が強かったのでしょう。
しかし、実は僕はこんなリアリティのあるラストは無いなと思っています。
今、世の中で大変な騒ぎになっているのは、まぎれもなくウィルスであり、多くの方が困難と苦しみ、そして戦っています(今回に限らず、一般的に知られていない地域や時代に、ウィルスは猛威を振るっています)。しかし、一体この事態を予測していた人はいるのでしょうか。そして、この事態をすぐに解決できる人はいるのでしょうか。
表現が心苦しいところはありますが、地球の微生物に「免疫がなかった」から死んでしまった火星人は、ある意味、今の地球人類と重なるところもあります。
生物学的には当たり前といえば当たり前ですが、
「免疫がない」というのは、突然わかるもの(突然対応が必要になるもの)なのです。
その現実を目にした時、決して、微生物(ウィルス)によって侵略者が一瞬で死んでしまうのは、批判をくらうようなラストではないと思えますし、むしろ現実を痛烈に直視しているとも言えます。
娯楽のSFから、現実的なSFへ
また、原題にもある「War(戦争)」なんていうものも、似ていませんか。
「お、あと10日で戦争はじまる!」「よし、残り3日で終わる~!」なんていうものはあるのでしょうか。ある日、突然始まったり、突然終わりを告げることが多いかと思います。特に一般市民目線ではそうなることが多いはずです。
それは公開直前にあった同時多発テロやイラク戦争も同様と考えられます(経緯については、アメリカ軍や戦勝国の中東への歴史的背景も踏まえる必要があるので、考慮は必要ですがここでは省略)。
ある意味、娯楽大衆向けだったSF世界観を、リアリスティックな志向に走らせた大きな転換点ともいえる。そう思うとスピルバーグは本当に偉大です。
ご存じの通り、スピルバーグは監督・製作指揮ふくめ『ジュラシック・パーク』シリーズ、『インディ・ジョーンズ』シリーズ、『メイ・イン・ブラック』シリーズ、『トランスフォーマー』シリーズなどなど、「見せる演出」も大の得意です。
敢えてこの宇宙人侵略物で逆を取ったのは、意味があるんですよね。
※関係ないですが、スピルバーグはフォーブスの「アメリカで最も裕福なセレブリティ」2位の人物らしいです、す、す、すごすぎる!!!
真の恐怖は、敵ではなく群衆だった
更に、「見せない演出」は、人間心理の表象を際立てています。
そう、本当に怖いのはエイリアンではなく、人間たちなのです。
勿論、エイリアンによる直接的な攻撃が怖いのもありますが、序盤はどちらかというと人間同士の醜い争いに集中しています。
家族を乗せて車を夜通し走らせていたら、逃げそびれた群衆に出会い、「あと10人は乗れるぞ!」と怒鳴られて、車から引っ張り出されてしまいます。レイは乱闘の末、自宅から持ってきた銃で群衆を威嚇するものの、ほかに銃を持っていた輩に車は取られ、レストランに逃げ込み絶望のあまり思わず泣いてしまう。と思ったら、銃殺の音が聞こえる。おそらくは先ほど車を奪ったものが撃たれ、また別の襲撃者が車で逃走を図ったのでしょう。。。という、もう惨憺たる人間の有様。
車から家族を引き離したのは、
侵略者ではなく、人間なのです。
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ハドソン川を渡るシーンでは、この論理がさらに磨かれて描かれています。
船に乗り込む際に、ギリギリ間に合わずに出発してしまいそうになると、
今度はレイが「まだ乗れるだろ!」と怒りをあらわにします。
自分が車を運転している時は、通行人のそんな言葉に対してまったく無視していたレイ。
しかし、立場が逆転すると、たちまちまったく正反対の行動に出ています。
一貫性のない言動を取っていることに気づきます。
これも、極限状態に置かれた人間心理なのでしょう。
助かるためなら、自らの信念や大義なんてどうでもよくなる。
とにかく自分と家族の命を保証するためなら、周りなんてどうでもよくなる。
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これもまた、『宇宙戦争』が描く普遍的なイズムの点であり、娯楽映画であるような理想主義に立っていないことがわかります。(良い悪いではありません)
※ちなみに、このハドソン川付近で「O型とRH-型の血液型だけ足りません!」みたいなことを訴えていた人がいましたが、個人的にあれはちょっと蛇足だったような気もします。少しでも優しい人がいるという意図の演出なのかわかりませんが、あの緊迫した光景の中で、あのセリフがくると「こんな時に、他の血液型は誰かが呑気に献血してあげてるのか?」と思ってしまい、せっかくの現実味を失いかねないシーンかなと思います。
本当のハリウッド要素は「家族愛」にある
…とまぁ、現実的・普遍的なのを伝えたいのはわかるが。。。
「それは分かるが、映画なんだからもう少し希望があっても!」
その声もわかりますし同意です。
しかし、今回のトム・クルーズの役レイ・フェリエを見ると、
実は別の観点でこの作品はかなりハリウッド映画的な性質、つまり夢を与える要素を兼ね備えていることがわかります。
それは、『家族愛(親子愛)』を伝えている映画だ、という点です。
この映画は「家族を守る」というのがテーマであり、実は「宇宙人を倒す」は副次的、というか、ふりかけ程度の存在のように思えます(笑)
そもそも、大人気俳優トム・クルーズにしては珍しいダメダメな父親という設定。
妻には離婚され、息子のロビーからは「レイ」呼ばわりで相手にされず、娘のレイチェルの好き嫌いも把握していないどころか、ジョーク(?)も「独立記念日は今日じゃないよ」みたいな冷静に指摘されています。ピーナッツバターをパンにつけて配るものの、ロビーもレイチェルも「いらない」と反応して窓に投げつけるシーンとか、結構印象的ですよね。娘を落ちつかせるおまじないも、ロビーの方が得意で、しかも父親はおまじないを微妙に間違えているというのも笑えます。
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仕事もクレーンを動かす港湾技術者で、彼にしてはぱっとしない役回り(※港湾技術者という仕事がどうのこうのではなく、主人公として、という意味です)。しかも、この仕事の技術、なにかに活かされるパターンかと思えば、まったく関係ない笑 これもまた観客を裏切るような良いところ。
また、レイのさらに面白いポイントですが、緊急事態とはいえ、普通に持ち主を前に置き去りにして車を盗んだり、その車が盗まれそうになると銃を発砲して威嚇したり、自分たちを匿って助けてくれたオグルビーという精神異常者を射殺(原作では高熱ビームで殺されているw)したり、実はなかなかに極悪非道な人間なのです。
トム・クルーズがここまでダメな非道男を演じている点(ある意味では命を張って家族を守っている点)が、結構好きなんです。平凡な一般市民が極限状態に陥った、という観点で非常にマッチしており、エイリアンからの恐怖だけではなく、人間心理の恐怖をより強く訴えかけられるのです。
しかし、この映画、ラストに近づくにつれ、レイが二人の子供との絆を強くしていきます。映画的には、離婚した夫婦が結束して家族が仲良くなるなんてありふれた設定でしょうが、クライマックスになるべき「宇宙人打倒カタルシス」の代わりはここにあるように思えます。
あんなにバラバラだった家族が、最後のシーンでは、互いに抱き合い、妻とも仲良くなります。レイチェルに至っては一度捕獲されたにもかかわらず、レイによって助けられているので、もう正義のヒーロー以上の仕事っぷりです。
ヒステリーになる娘、自我に走る息子
レイチェルといえば、なぜかgoogle検索で「宇宙戦争」と打つと関連キーワードに「レイチェル うざい」「クソガキ」と出てきますw (クソガキはロビーのことなのか分からんが)
確かに、少しヒステリーが行き過ぎてキャーキャー過ぎるというか、人によっては思考回路が邪魔されてイライラポイントなのかもしれません。個人的には、あのくらいの娘がこんな宇宙人みたらそうなるだろう、くらいの感覚であったのと、意外とこのダコタ・ファニングの子役演技が恐怖感を増大させる良い輝きを放っているので、そこまで気にはならなかったですかねw
息子ロビーも良い味を出しているんでよね~
というか、最初トム・クルーズの兄弟?!くらいの年じゃん(笑)と思っていましたが、よくみると少しあどけない小年感があり安心w
ま、欧米人は大人びて見えるというのもあるんですかね。
ロビーは、後半で「やつらの最後が見たいんだ」と言ってレイと口論の末に別れを切り出します。
米軍兵器と激闘を交える戦場の彼方へ消えていく息子、それを見届ける父親。
なんかぐっとくるものがありますよね。反抗期という単純な次元ではなく、一人の人間としての選択を父親に突きつけた、という感じです。この極度の緊迫状態において、息子も生死はどうでもよくなったのかもしれません。どうせ死ぬなら、最後に米軍によって打倒される宇宙人を一目でも見たい、そんな気持ちがあったのかもしれませんね。
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勿論、娘を守る必要があるので、そちらを優先させたとも解釈できるシーンですが、あのレイの少し懐疑的ではあるが寛容的な面持ちは、どこか息子を一人の自立した人間の生き方として認識したような表情が感じ取れるんですよね。冒頭のキャッチボールであまり意気投合できていない点と比べると、短期間の間に成長のようなものを感じます。
人生の選択を自ら決断し強くなった息子の現れと、それを容認せざるをえない父親の関係は、非常に心揺れるものがあります。勿論、別れ際に「ロビィイイイイイ」と叫んでいるので、つらい気持ちでいっぱいだったのもわかります。
※直後の大爆発にも関わらず、なぜか生きていたロビーの秘密はないしょないしょ^^
「血の草」の意味が怖すぎる件
その後、必死の逃げ回りでレイチェルを地下室で守り抜いた後、匿ってくれたオグルビーがうるさいのでなんと射殺!ようやく安堵の息をつきますが、しつこく偵察しにくる触手。寝ている間に不意打ちされたその時、レイチェルは外に出てしまいます。
レイがそれを追って地上に出た頃には遅く、
レイチェルがいない!!
呼んでも見つからない!
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まさか!!
この辺のレイチェルが捕獲される直前シーンは、もう、ほんと見ごたえがあります。
どこだ、どこだ、と静かな夜中に視線を追うところの切迫した緊張感は、体が強張ってしまうほど。
なんとかここまで守り抜いたのに!!息子まで失ったのに!!!
もうやられっぱなしなんだから許してくれよおおおおおおおおおー!!!!
と懇願する我々の思いとは裏腹に、今度はレイまでトライポッドに捕獲されてしまいます。
作中後半から描かれていた不気味な「血の草」の意味がここでわかります。
なんと、彼らは人間の血を自らの栄養にし、そして地球を自らの住みやすい環境にすべく血を肥料にしていたのです!(設定怖すぎワロタ)
一人一人、吸盤みたいなものに吸い取られて血にされていくという地獄絵図。
娘を捕獲され、自分も捕獲され、これから殺されることも確定。
ParamountPictures/Photofest/MediaVastJapan
もう絶望展開すぎて泣けてきます泣
こんなにやられっぱなしでいいのかよ!
と思ったその時、なんとか捕獲された人間たちの協力もあり、
手榴弾で内部からトライポッド1機の破壊に成功したレイ。
娘とともに朝まで隠れ逃げ、米軍と合流。。。
その後、微生物の感染によって宇宙人が死滅してから、ロビーや元妻とも合流し、感動を分かち合います。本当のハリウッドあるある的な落ちはここであって、家族愛という観点でいえば「壮絶なパニックを共に乗り越える」物語なのです。
大人気!トライポッド君の音がヤバい!
捕獲されるくだりで宇宙人の話をしましたが、彼らはなかなか怖いです。
特に、その宇宙人(火星人)の侵略兵器!
トライポッドですよ!!!
※注:テトラポッドみたいな可愛いものじゃないですよ!
僕は子供のころトラウマになりました笑
まず、あの雄たけびっていうか、金属的な警笛音っていうんですかね、
ブゥ~~~~~ウゥ~~~~ンっていう音が本当に怖い(死にそう)
「アポカリプティック・サウンド(終末音)」とも呼ばれるようですね。
War of the Worlds:(C) 2005 ParamountPictures/Photofest/MediaVastJapan
これも「みせない演出」の一部です。地下室でオグルビーと隠れているシーンは、逃げ回るこの物語のなかでもかなり尺を使った舞台です。直接的な宇宙人が登場せずとも、トライポッドの不気味な警告音が聞こえるだけで、「近くにいる!ひょっとしたら地下室に入ってくるかも!」という戦慄が走るのです。ちなみに、あの音は、『未知との遭遇』の宇宙船の効果音を使用しているみたいです。いや、本当によく出来た怖い音ですよ。※目覚ましのアラームにしたらいいですよ。
そして、この地下室のくだりもマジ怖いw
53年版でもここが見どころのようだったですが、物音を立てないように隠れたり、鏡を使ったり、うまく逃げこんだり、娘のレイチェル(ダコタ・ファニング)が迫真の演技で恐怖を煽ったり、息が詰まるシーンの連続ですよね。
空から舞い降りた侵略者
トライポッドは、出現シーンも恐ろしいです。
雷のような稲妻が連続的に発生するところなんかも、これから何が起きるのかわからなくてゾクゾクです。この雷と一緒に落下した宇宙人は、数百万年前から地中に埋め込んでいたというトライポッド(原作では戦闘機械・fighting-machine)に乗り込み、地上に出てきます。
※実は、作中にTVクルーが撮影したスローモーション映像では、この雷には宇宙人らしい姿が映し出されているみたいですよ。凝ってますね笑
地上に出てくる時のシーンなんて、今見ても本当に怖い瞬間で、堪らないものがあります。
(原作では、円筒に乗って緑色の流星として飛来しています)
ParamountPictures/Photofest/MediaVastJapan
群衆が見守る中、地面に地割れが起きたと思えば、教会が真っ二つ!
この建物が縦にパカって割れてしまうみたいな演出も神掛かっています笑
どんなやからが出てくるんだと思わずくぎ付けになっている間に、メカニックな造形デザインのトライポッドが眩い光とともに登場し、突如破壊光線(レーザー光線?w)で人々を撃ちまくっていきます。
殺人光線が始まるまでの微妙な「マ」がまた、怖いんですわw
窓ガラスに反射させて一部移したり、カメラ越しに移したり、演出も凝ってます。
群衆もはやく逃げればいいのに(笑)、慌てて逃げ始めたころには遅く、次々と白い粉にされてしまいます。この「灰」演出も秀逸すぎます。どこまで意図しているのかは知りませんが、血が出ないことから地球上の兵器ではない未知の侵略兵器であることを視覚的に悟れるようになっており、背筋が凍るようなお出ましシーンなのです。
それにしても、ここのトム・クルーズ、逃げるのは似合うのだが、逃げ足はやすぎるw
「もうあたるやろ!」「いや、あたっとるわ!」って思うくらい、徹底して交わしているのをみると、彼の本当の仕事はダンサーなんじゃないかと思えてくるくらい華麗かつ俊敏な動きをしています笑
機械的×生物的な戦闘機械がたまらない
トライポッド、しかもけっこう大きいですよね。
原作では、30mという記述がありますが、映画では50mくらいはありそう。宇宙人自体は人間ほどのサイズですし、乗り物にしてはかなりでかいのがまた絶望的で良い。怪獣ほどの大きさなので、最初はあれが宇宙人なのかと子供のころは思っていました笑
War of the Worlds:(C) 2005 ParamountPictures/Photofest/MediaVastJapan
それにしても、この重厚感あるメカニックな感じと昆虫と言うか生き物っぽいナマモノ感が融合されているデザイン、非常に好きなんですよね。観れば見るほど、味が出てくるというか、その不気味さや恐ろしさが滲みでてきます。足が3本っていうのが、また奇怪な感じを出していますよね。
普通に格好いいとも思いますし、こんなのが上空見上げて君臨していたら、100%恐怖するっていう雰囲気が出てます。あまり移動が速すぎないのも、なんかリアルでいいのかもしれません。触手が無造作についている一方、その装甲は機械的なところが、うーむ、なんとも魅力的なんです。未知の戦闘機械というイメージにぴったりすぎます。
↓ちょっと欲しい。。笑
地球の技術発展に応じて、トライポッド様も強化!
原作からは100年後の現代なので、他にもいろいろと変えています。
そもそも、地球人側の技術が向上しています。
1898年はまだ車もないので、移動手段は馬車が一般的な時代です。
対して、2005年は一般人もみんな車持っていて、すぐに逃げてしまうなんてこともできてしまうので、磁気嵐という設定が加わっており、彼らの登場時に多くの電子機器が利用不能になりました。
※ただし、車はコイル交換すれば使えるようになったり、後半では海外のニュースが届いていたり、その影響範囲は不明
ParamountPictures/Photofest/MediaVastJapan
また、当時の兵器から、(よいのかわるいのか)だいぶ進歩しています。
今では原子爆弾もあるので、それに応じて敵も強化。
53年版からトライポッドにはシールド機能が加わっており、原爆すら受け付けない最強な無力化バリアーがあります。まじで絶望的すぎるw
このシールドが強すぎるせいか、原作では途中からトライポッドが液体のような黒い毒ガスと熱線を使う戦法に切り替えていますが、映画ではそういった設定はなさそうです。
また、原作ではシールドがなく「原爆も通用しないなんて最強すぎる!」という感覚は映画よりはないので、地中に埋まって頃合いを見て出現したのはなんとなく頷けますが、映画版であれほど強いと「そもそも地中に隠れている意味あったのか?もっと前から最強兵器で地球を制圧すべしでは?」という疑問点も出てきしまっていますね。
ここらへんの設定の祖語は、時代背景の変化があるので多少は仕方ない部分もあります。
53年版といえば、映像的にも進化しています。
スピルバーグ版では、CG技術の発達により(原作以上の?怖い)トライポッドが演出できていますが、53年版ではマーシャン・ウォーマシンという機体になっており、目がカラフルで結構ルックスが違ったりします。あれもあれで怖くて人気らしいですが笑
タコ型人間には、合理的な理由があった!
前述の通り、宇宙人の姿はのちの火星人の典型例になったもので、タコ型人間(わかりやすい名称w)です。
しかし、これ原作では科学者が言及しているのですが、
実はちゃんと意味があるんですよね!
そう、火星の環境を考慮しているんです!
・重力が地球より小さい⇒体を支える構造が軟弱⇒四肢が退化
・同じ理由で消化器官も退化⇒動物の血液を直接摂取して栄養を得る
・地球より空気が薄い⇒空気を吸い込む部分が大きい
・目は、暖色のみ判別(火星は暖色だから?)⇒青や緑が黒に見える
・地球の気圧・重力に対応するほどの運動能力がない⇒16本の触手があるが、直立での動きは苦手⇒トライポッドに頼る
などなど!
タコ型人間、ただ薄気味悪いからそういう設定が流布したのかと思っていたら、
意外と合理的な理由だったというお話ですw
なぜ、OSAKAではトライポッドが倒せたのか?
トライポッドについて、日本人なら気づく面白いセリフがあります。
それは「大阪では何体か倒したらしい」というオグルビーの発言です。
無論、オグルビーは精神異常をきたしていましたし、あのパニックの緊急事態でデタラメを言っていたのかもしれません。また、情報が錯綜し、デマとなって流れてきたとも考えることはできます。
ParamountPictures/Photofest/MediaVastJapan
しかし、のちにスピルバーグは、このことを聞かれたときこのように答えています。
なんと!!笑
ロボットに詳しいからという理由、これは笑えますね。
しかし、大阪である必要はないのでは。。。
これにはインタビューでこんなことも発言しています。
なるほど、さすがスピルバーグです笑
ネットでぐぐると、いろいろな方が「大阪でトライポッドを倒せた理由」を考察しており、結構面白いのでぜひ見てみてください。ちょっとあげてみます。
・手榴弾によるカミカゼ的な特攻説(これは唯一倒せた方法なので、結構有力w)
・道頓堀の汚いばい菌にやられた説
・そもそも関西人のギャグだった説
・宇宙人が食い倒れで死んだ説
・大阪のおばちゃんが強すぎた説
・大阪人のギャグでトライポッドがずっこけた説(ワロタw)
などなど。。。
皆さんよく考えますねwww
まぁ、アメリカの映画業界におけるオトナ事情もあるでしょう。
日本での興行収入は結構な割合を占めるので、日本人を良い感じに出すのは、よく散見されるものです。(とかいったらつまらんか…)
彼らの目的は何だったの!?
最後に、この映画で唯一物足りなかったもの。
それは「宇宙人の侵略目的」です。
上述の通り、ずっと地中に埋まっていたのに、なぜ今のタイミングで出てきたのかがまったく明かされていません。宇宙人が地球をどうして侵略したいのか、その目的が分からないので、この手のものが好きな方のなかには途中から「彼らの目的は何なの?」と疑問になる方もいると思います。
制圧して自分の好きな環境にしたいように思えますが、
それならもう少し一網打尽にできる侵略兵器を持ってきた方がよいようにも思えます。
数百万前から埋め込んでいた技術があのレベルなら、今頃はもっとハイテク技術なはず。
ParamountPictures/Photofest/MediaVastJapan
攻撃方法も同じで、一人一人レーザーで灰にするのは演出としては最高なのですが、あまり効率的なやり方には思えません。原作のような毒ガスの強化版で、一斉虐殺とかのほうが生産的ですし、できないにしても、夜中に建物破壊したほうが楽ちん。
また、血が栄養や肥料になるなら、普通に殺したほうが血は残ります。
途中から人間を栄養や肥料にし始めますが、ここらへんも映画だけではよくわかりません。突然赤いツタのようなものが沢山出てきて、「彼らはなにしてるんだ?!」という感じで、特に説明や考察がないので、見ている方の中には、「あの植物何なの?」になる方もいるかもしれませんね。(僕も後で意味が分かりました)
謎に包まれていること自体が魅力だった
唯一のヒント(笑)?といえる、宇宙人が地上で見えるシーン、それは地下室のところです。
宇宙人たちがとことこと降りてきたと思ったら、写真?のようなものを物色しています。
休憩時間のような暇つぶしとして、地球人の嗜みを観察していたのでしょうか。もしかしたら「お、この写真のこいつの血、美味しそうだなー!」なんて会話をしていたのかもしれません笑
とまぁ、『原作に忠実に!』という点が少々裏目に出てしまったのも否めないですが、この映画の本質はこんなSF的な整合性ではなく、「宇宙人の出自や目的がよくわからない」設定そのものが魅力であるようにも思えます。むしろ、敢えて「隠している」演出なのです。
地球人と接触して「地球から出て行ってくれないと殺す」などの宣言や交渉もないので、終始彼らが不気味なヴェールに包まれた敵として映ります。ある意味で、太刀打ち不可能な絶対的な存在として描かれており、ほかのSF映画でみられるような科学者や軍関係者が打倒方法を練るようなシーンは一切ありません。
ParamountPictures/Photofest/MediaVastJapan
戦闘シーンだけでなく、戦略会議シーン的なのもないのは、なんでもない一人の一般市民目線をとことん追及している証です。ここの徹底ぶりは「見せない演出」と連動して、さらに宇宙人たちの恐怖を肥大化させているのです。
ということで、以上で『宇宙戦争』の考察を終えますが(めちゃ長くなった笑)、原作者のH・G・ウェルズもスピルバーグもそれを支えたスタッフ陣、トム・クルーズをはじめとした出演者などすべてうまい感じに相まってのスピルバーグ版『宇宙戦争』は傑作といえます。
原作よりすこし捻ってほしかった意見もあるようですが、
『宇宙戦争』は個人的にはこの落ちがやっぱり良いと思いますね!
それではまたお会いしましょう!
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