隕石ものの映画といえばスピルバーグによる98年公開『ディープ・インパクト』!アルマゲドンと徹底比較!原作は何?ネタバレ徹底考察!
泣ける!ジェニーの最後、大統領の名言、リオ・ビーダマンとサラ。巨大な津波はやっぱすごい迫力!科学的な考証+SF徹底解説していきます!いざ、SFの世界へ…!
ディープ・インパクト のネタバレ感想・考察・徹底解説 (Ryo)
本日は、98年公開のSFスペクタクル大作『ディープ・インパクト』についてネタバレ徹底考察です!
というのも、最近、『グリーンランド-地球最後の2日間-』というディザスタームービーが公開されましたよね。
地球崩壊まで48時間『グリーンランド』公開記念! 『アルマゲドン』『2012』…あわせて観たいディザスター映画
この記事を拝見していて、 『ディープ・インパクト』 ってかなり面白い映画だったよなぁと思い出し、これを機に徹底考察!『グリーンランド』を観られた方、これから観られる方、そしてそれを機に実は 『ディープ・インパクト』 観ましたって方は必見コラムですよ!
今回は18項目でネタバレ徹底解説!
- 20年間を経て「融合作品」になった物語
- 地球最後の日 × 神の鉄槌
- 実は、結構豪華キャスト陣だった!
- アルマゲドン VS ディープ・インパクト徹底比較!
- なんでこんな同時期に、同じような作品が出たのか?
- 二つの競合作品、そもそも路線が違う!?
- なんと!映画会社のオトナ事情があった!?
- 最大の魅力は、”主人公がいない”群像劇
- 夢のキャリアを求め、夢の親を求めたジェニー
- 巨大津波シーン、今見てもヤバすぎでしょ!!
- 誰よりも落ち着き、誰よりも国民を落ち着かせた大統領
- 『2012』よりはマトモな政府!?
- 英雄の条件は、命を賭けること
- リオ・ビーダマンから学ぶ「愛からの誓い」
- 主人公は「地球人類」だった
- 明日で地球は終わり――あなたはどう過ごすか?
- この映画、科学考証はどうなのか?
- 総合評価、やっぱり高いんだよなぁ!
20年間を経て「融合作品」になった物語
さて、本作は1998年公開のSF映画ですが、「隕石が地球にやってくる天災もの」といえば、同年公開の『アルマゲドン』の2か月前に公開なんですね。
『アルマゲドン』と 『ディープ・インパクト』 の徹底比較は後述します!
本作品、もともとは1933年にフィリップ・ワイリーとエドウィン・バーマーの共著によるSF小説『地球最後の日』(原題:When worlds collide、邦題:『地球爆発』『地球さいごの日』)の映画が1951年にアメリカで公開されましたが、そのリメイクとして企画されたのが発端だったそうです。
ちなみに、51年映画『地球最後の日』(公開当時の邦題:『地球最后の日』)は、ジョージ・パル制作ですが、彼は『月世界征服』『宇宙戦争』『宇宙征服』とともに宇宙映画四部作といわれる作品を残しています。
◆怖すぎた『宇宙戦争』のネタバレ徹底考察コラムはこちらから!
さて、映画プロデューサーのリチャード・D・ザナックとデヴィッド・ブラウンの二人が、そんな映画のリメイクを思い立ったのは、なんと1970年代の中ごろ!そう、今作にいたるまで20年以上の月日を掛けて実現しているのです!!!その点を考えるとなんだか感動しますよね!!!
二人は、『ジョーズ』などで手を組んだ仕事仲間であるスティーブン・スピルバーグ監督と再会した時、スピルバーグから一緒に創ろうという話になります。実はスピルバーグは、当時アーサー・C・クラークの小説『神の鉄槌(原題:The Hammer Of God)』の映画化に向けて準備中だったのですが、このストーリーがザナック&ブラウンの企画と似ていたのです。
彼らは、互いに競い合うよりは融合させる道を選んだのです。
ただ、当時スピルバーグは『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(1997)や『プライベート・ライアン』(1998)などでスケジュールが立て込んでいたため、彼は製作総指揮として今作に入り、監督はミミ・レダーが入ったという経緯があります。
ミミ・レダーは、なんと実はこれが監督第2作!
SF映画未経験!!
2作目でこの規模の映画とはスゴイ!
1作目の『ピースメーカー』も有名で彼女の味が出ているのでぜひご覧くださいね!
※スピルバーグたちが設立したドリームワークスの第1作目にして、ジョージ・クルーニー&ニコール・キッドマン出演というスンゴイ映画!
ミミ・レダーは、日本が好きらしく、黒澤フリークとも知られています。彼女のそんな想いが 『ディープ・インパクト』 には実は垣間見えるところもあるので、これも後ほどお話しますね!
地球最後の日 × 神の鉄槌
脚本を担当したのは、ブルース・ジョエル・ルービンとマイケル・トルキン。
ルービンは、『ゴースト/ニューヨークの幻』(1990年)でアカデミー脚本賞受賞しており、生や死、霊といったものをテーマにしている作品が多いです。この作品に多くの生死への思いが見られるのは、彼の力ではないでしょうか。また、映画『地球最後の日』の大ファンであったりもします。
実は、 『ディープ・インパクト』 のプロットは、『地球最後の日』と『神の鉄槌』をうまく融合させたともいえるものがあります。
『地球最後の日』でも、天文台でまず衝突への発見があってそれを博士に届ける流れ、同じく大津波が押し寄せて大都市がやられてしまうシーン、選別された者だけが逃げることができるという「ノアの箱舟」(原作では宇宙船の建造)、選考結果をめぐる人間模様など似ています。
こちらの作品では、地球に衝突するとされたアルファの伴星であるベータに人類が移住する計画が出てきますが、これはスケールも大きく発想が斬新!!実に面白いSF展開ですよね。
『神の鉄槌』も然り。西暦2109年が舞台ですが、地球へ迫り来る小惑星カーリーを、宇宙船ゴライアス号による爆破作戦(『アトラス』作戦)で二つに分裂して軌道を変えるなんてところはそっくりです。(作戦に神話っぽい名前をつけるのも似ている。。。?)
※原案として使用料は支払われていたみたいですが、映画のクレジットには記載がありません。『地球最後の日』も同様にクレジットから外れていますので、二つの融合作品として、それぞれ一部設定を使ったという意味では、「原作」とは言えないみたいですね。
この有名な二つの原案のハイブリッド、もしくは、二人の脚本家によるハイブリッド作品、いや、スピルバーグとミミ・レダーによるハイブリッド共作ともいえるこの 『ディープ・インパクト』 は、その影響もあってか、かなり練られたドラマが反映されています。
実は、結構豪華キャスト陣だった!
『アルマゲドン』 のブルース・ウィリスと比べると、地味な印象が強いかもしれませんが、実は、キャストも結構豪華です。
まずはなんといっても、彗星を発見した少年リオを演じるイライジャ・ウッドです。彼はこの後『ロード・オブ・ザ・リング』で大ブレイクしますが、この時みても綺麗な目が印象的ですね。この作品の中で結婚をする時に結婚指輪を持っていますが、これは、実は将来の彼の運命を意味していたのか。。。!?(笑)
また、黒人大統領としてモーガン・フリーマンが登場。
ちょっとまってください、この映画は1998年です、そう、まだオバマ大統領より10年以上も前なんです!おそらくハリウッド映画史上、初めてでは?同じく黒人大統領が出ているドラマ『24』や映画『2012』より全然前ですからね。
当時は結構驚きだったのではないでしょうか。今でこそよくみる黒人大統領ですが、当時としてはここも一つ大きなスパイスであったに違いありません。
このモーガン・フリーマンがとにかくめっちゃイイ!!!!
いやぁああ、いいんですよ、光ってます、こんな大統領がいたら!って思ってしまうくらいに最高な役を演じています!!!
また、シーズン6まで公開されたアメリカの人気政治ドラマ『マダム・セクレタリー』、実は製作総指揮がモーガン・フリーマン、そして主演の国務長官演じるエリザベス・マッコードは、ティア・レオーニ、そう、今作の主役の女優さんでもあるんです。面白いつながりがあるものですね!
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ニュースキャスター役のティア・レオーニは『天使のくれた時間』や『ジュラシック・パークIII』にも出演しており、俳優一家出身の実力派女優です。国内ドラマとかで有名なので、日本では超有名!というほどはありませんが、今回のキャスター役も色々な表情を絶妙に見せており、結構演技がうまいなぁという印象です。
宇宙飛行士役のロバート・デュヴァルは大御所ともいえるかもしれません。クレジットでもwikipediaでもキャストの中で一番最初に出ていきます。『ゴッドファーザー』(1972)や『地獄の黙示録』(1979)などでアカデミー賞も7回ノミネートされているベテラン俳優です。
そんなこんなで、この映画は多くの登場人物の視点で物語が動くことが大きな魅力です。
それでは、もっとストーリーの考察に入っていきましょう!
アルマゲドン VS ディープ・インパクト徹底比較!
ストーリー考察に入れば、おそらくSFファンなら誰しもまずやってほしいと思うことがあるでしょう。
それは、同年公開の 『アルマゲドン』 とどっちが好きなんだお前は!?トークですww
※厳密にいえば、 『アルマゲドン』 は小惑星、 『ディープ・インパクト』 は彗星(隕石)という違いはありますが…
これ、むずいんですよね~どっちも好きなんですよ。
端的に言うと、 『アルマゲドン』 は映像重視!!派手に王道!アメリカン!みたいな感じで、 『ディープ・インパクト』 はストーリー重視!人間ドラマ!グローバル!みたいな感じですかねw
アメリカの共和と民主党との違いくらいに例えられるかもしれないですね。
保守的なアメリカン・愛国主義好みと自由主義的な国際派・多様性好みみたいな?
要は、 『アルマゲドン』 はブルース・ウィリス演じるハリーによるスーパーアメリカンヒーローによる華々しいお話という匂いがするのに対し、 『ディープ・インパクト』 は様々な人間模様を一歩引いて観るような匂いがするという点に大きな違いがあるように思うんです。
なので、結構自分の気分次第だったり、時間たったら好みが変わったり、みたいなことがちょくちょくあります。シンプルにダイナミックな映像と共にカタルシス味わって感動するならやっぱ 『アルマゲドン』 ですし、色々な気持ちで物事を見てヒューマンドラマに涙して感動するなら 『ディープ・インパクト』 みたいな感じw
(果たして伝わっているのか。。。
なんでこんな同時期に、同じような作品が出たのか?
ということで、端的に言いましたが、もう少し細かく見ていきましょう。
そもそも、なんで1998年にこんな似た映画が出たの?って話ですが、実はアメリカではよくあること。アメリカ映画では、一本の映画に数十人の脚本家が関わる制作方法をとっているらしく、同じアイデアをもとに別々の映画会社で製作されるんですね。
実際、他にもそういえばあったな、、、って思って、調べてみると、SF・パニック映画関係だけでもこれくらいあります。
✅1989年公開の深海もの
・『アビス』、『リバイアサン』、『ザ・デプス』
✅1997年公開の火山噴火もの
・『ボルケーノ』、『ダンテズ・ピーク』
✅2000年公開の火星もの
・『レッドプラネット』、『ミッション・トゥ・マーズ』
✅2013年公開の「人類が滅亡した後の地球」もの
・『アフター・アース』VS『オブリビオン』
めっちゃある!!!笑
特に1990年代後半あたりは、上記みてもわかるように、パニックものやディザスタームービーが流行っていた頃でしょう。
1997年にはパニックな展開のなかでヒューマンドラマが描かれるという意味では『ディープ・インパクト』 にも似ている『タイタニック』が大ヒットしました。どこかスタイルも少し似ているかもしれません。※ちなみに音楽は 『タイタニック』 と同じJ・ホーナーです。
同年の1998年には、他にも、多くのSF作品がトレンドになっていたのではないでしょうか。
エメリッヒの『GODZILLA』はじめ、『ガタカ』、『プレデター』、『エイリアン4』、『スターシップ・トゥルーパーズ』、『Xファイル ザ・ムービー』、『スフィア』などなど。。。
後にシリーズ化なっているものなど人気ヒット作品が多い!
というのも、1999年にはノストラダムスの大予言があり、地球滅亡説やパニックものは世間的に人気だったという背景があります。実際、エメゴジの監督エメリッヒも、本当はあの作品の代わりに隕石ものの映画を創りたかったと発言しています。さて、エメリッヒもここに加わったら、巨匠による隕石衝突映画が一年の間に3本も出ていたのでしょうか。それはそれで興味がある…笑
『アルマゲドン』 も、スピルバーグ製作の『ツイスター』(1996年)という巨大竜巻パニック大作がヒットしたから企画されたという経緯があります。パニックものの全盛期ともいるかもしれませんね。
結構、最近のディザスタームービーやパニックものは、「〇〇のパクリだ」「〇〇の焼きなおし」「あれとあれのミックスだ」みたいに言われがちですが、大体がこの時代にフォーマットを創ったともいえます。ただ、こんなに映画がありふれた現代、多少は似た設定になってしまうのは仕方ないと思っているので、あまりパクリパクリと外野から突っ込むのは野暮な気がします。。。(だったらなんか考えてみぃや…)
二つの競合作品、そもそも路線が違う!?
さて、ド派手映像で見事に興行収入を成功させた 『アルマゲドン』 ですが、 『ディープ・インパクト』 との製作費の差を見てみましょう。
🔶アルマゲドン
・製作費:1.4億🔷
・世界の興行収入:5.53億ドル
(アメリカでの興行収入:2億ドル)
🔷ディープ・インパクト
・製作費:8,000万ドル
・世界の興行収入:3.49億ドル
(アメリカでの興行収入:1.4億ドル)
これを見てわかるように、 『アルマゲドン』 は最初から多額の製作費を費やしています。なので、迫力や映像で勝負しに来ていますよね。 『ディープ・インパクト』 のアメリカでの興行収入が、 『アルマゲドン』 での製作費に相当する(1.4億ドルである)ところから、その差が明瞭にわかります。
視覚効果では、16社もの特撮プロダクションが参加しているらしいです( 『ディープ・インパクト』 で関わったILM社以外ほとんどでは?)。
対して、 『ディープ・インパクト』 は8,000万ドルという、この手の映画の中では控えめな製作費であり、映像メインというよりストーリー重視なのです。製作したのは当時世界最高のVFX工房だったILM(インダストリアル・ライト・アンド・マジック)社ですが、 『アルマゲドン』 には参加していません笑
低予算で急いで仕上げたものだったと聞いてはいますが、彗星が地球に衝突するシーンや巨大津波が押し寄せるシーンは今見ても大迫力!!です。さすがILM!!あの「ジュラシックパーク」を創り上げただけはある。。。
この津波シーンは、完成に6か月を要したらしいです。。。とほほ。。。
こちらの動画でいろいろ語られているようですね。
※しょっちゅう映画でホワイトハウスとか観るけど、意外とワシントンでは撮影においての制限が多かったらしい。。。
Deep Impact – Making an Impact.
…なので、こんなこと言うのもなんですが、最初からお互いに向かっている路線が異なっているので、この二つをあんまり比較しすぎるのもナンセンスなんですよね。
製作費が同じ、どちらも映像にお金かけて、ストーリーに脚本家つめこんでいる、そういう同じ土俵であるなら、然るべき比較の評価は正しいですが、そもそも狙ったものが違っているという前提は大事です。
なんと!映画会社のオトナ事情があった!?
しかし、いくらなんでも、わざわざこんな同時期に出さなくても!とも思いますよね。
これには、色々と大人の事情も絡んでいるようです。
『アルマゲドン』 はディズニー系列のタッチストーン・ピクチャーズ製作ですが、 『ディープ・インパクト』 はドリームワークス製作です。実は、ドリームワークスは、元ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ会長のジェフリー・カッツェンバーグがトップであり、彼はディズニーに対して猛烈な対抗意識を持っていたといいます。
カッツェンバーグは、ディズニーに勝つために、敢えて2か月差という同時期にこの作品をインパクト!!(笑)させたのではないでしょうか。イイ感じに 『アルマゲドン』 と対照的な描き方になっているのも、それが理由なのかもしれません。
Framed Ink: Drawing and Composition for Visual Storytellers
また、2か月のビハインドを食らった 『アルマゲドン』 、実は日本とアメリカではすこし打ちだし方が違っていたようです。アクション大作・娯楽映画がヒットしやすいアメリカ市場では良くても、日本では『ディープ・インパクト』 と同じ映画として扱われ、映画館に行く人が少ないかもしれない。
そこで、「泣ける・感動する映画」が受けやすい日本市場において、 『アルマゲドン』 では「父と娘」の絆を強調した打ち出し方を取ったようです。その結果、日本での興行収入は大成功したというお話があるようです。
詳しくは、こちらの本に記載がありますので、気になるかたはぜひ!
参考:ヒットを生み出す インスピレーションの力学、共感という魔法 東映、ディズニー、東宝東和で学んだ仕事のヒント56
最大の魅力は、”主人公がいない”群像劇
『アルマゲドン』 との違いで多くの批評家が指摘するように、 『ディープ・インパクト』の特徴は、その作劇方法が群像劇スタイルであることにあります。
『ID4』(1996年)がグランドホテル式でヒットしたのを真似したのか分かりませんが、 『アルマゲドン』 はブルース・ウィリスが主人公で主に彼視点で物事が進んでいくの対して、 『ディープ・インパクト』 はまったく関係のない主役たちが複数存在しており、同時進行で描かれているのです。それも、まったく交わることがないのも、また稀だと思います。
本作の見どころは、間違いなく、ここにあります。
MYLESARONOWITZ_9/DREAMWORKS/PARAMOUNT/TheKobalCollection/WireImage.com
最初にニュースキャスターのジェニー視点で物事が進んでいくので、彼女が主人公なのかと思えば、主役の1人という感じにすぎません。
彗星を発見したり、サラと一緒に恋愛模様を繰り広げる若きイライジャ演じるリオかと思えば、彼も主役としては、ワン・オブ・デム。
では、宇宙船に乗って彗星爆発を試みる宇宙飛行士のフィッシュことタナーかと思えば、彼も出演している割合でいえば、3割くらいじゃないでしょうか。
同じ群像劇スタイルのディザスター系である『ID4』や『2012』には、もっと明確な主人公(ウィス・スミスやジョン・キューザック)が存在していますが、この映画、あまり明確に存在していないんですよ。というか、まったくいません。
「掘り下げが甘い」「薄っぺらい」という声があるのもうなずけますが、
僕は、個人的にここが好きなんですよね。
つまり、観客に対して明確に「この人見てて!」と訴えられている感がないのです。「貴方が気になる人見て!」といったメッセージをいつのまにか受けており、あまり押し付け感がない。大統領とその側近の苦悩、ジェニーの親子関係、命を賭けて地球を守る宇宙飛行士たちとその家族、リオとサラの恋愛、そして結婚。どれもそれぞれにドラマがあって、展開が様々なので、年齢や今の環境によって、感情移入するポイントが変わってくるのではないでしょうか。ある意味で、全員主人公に「なり得る」という面白い構造です。
映画が主人公を決めるのではなく、観客が主人公を決めるのです。
夢のキャリアを求め、夢の親を求めたジェニー
まず、冒頭から登場するジェニー・ラーナー。
報道に命を賭けているんだ!と言わんばかりの、ザ・仕事人という印象で良いですよね。アンカーウーマン(キャスター)を目指しているある日、財務長官アランが突然辞退したことに「エリー」という女性との不倫スキャンダルが絡んでいると踏んで突撃取材をしたところ、政府(FBI)に連行されてしまいます。
しかし、実際はエリーとは女性ではなく、「E.L.E.」(Extinction-Level Event=種の絶滅級の事象)のことでした。財務大臣は、政府が考える彗星への計画に成功を確信できず、辞退していたのです。不倫など存在していなかったのです!
ちなみに、この流れ、うまいなぁ~~~と思いました。
ジェニーの一連のシーン、最初は一体何のことだろうって感じなんですよ。隕石衝突映画って聞いたのに、なんか政府の汚職取材の映画?え、サスペンス映画?みたいなトーンで進んでいくので、わけがわからない。しかし、これは、実は簡単に今進行している政府の計画を、映画として観客に知らせるための仕掛けだったんですね。
この時点で、主人公が政府関係者だったり、なにかの研究主だったり、 『アルマゲドン』 のように穴掘りのプロだったり、メインで巻き込んでいく立場ではなく、あくまで自然に、偶発的に、計画に巻き込まれていくプロットに引きずり込まれ、観ている観客としてもいつのまにか「一般市民」と同化して映画を観ることになっているのです。これは面白い!!
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ジェニーのパートが語るメッセージは「キャリア」と「親子関係」でしょう。
衝突回避のための作戦である「メサイア計画」についての緊急会見の特別席に出席したジェニーは、社内のライバルであったべスを抜いて、メサイア計画の報道キャスターに抜擢されます。突撃取材するときのジャーナリストとしての姿勢、そして、報道キャスターになるまでの道は彼女にとって「キャリアアップ」だったのは間違いありません。
大統領に「なんでそんなにキャリアを追っているんだね?」みたいなこと聞かれた時、ジェニーは「国民には知る権利がある。真実こそ価値がある」と返します。これこそが、彼女の生きる意味だったのでしょう。
そんなキャリアウーマンに見えるジェニーですが、両親は離婚しています。父親のジェイソン・ラーナーは別の若い女性クーロイ(腹クローイ)と再婚しており、ジェニーは父親のことを許せない状態でした。そんな中、報道キャスターということもあってか、「ノアの箱舟」への避難者に選ばれますが、50歳以上で対象外だった母親は自殺。なかなかえぐい展開です。しかし、ミサイル迎撃によるタイタン作戦も失敗した後、「お前は一人じゃない」と父親に言われて家族のことを思い出したジェニーは、避難権を同僚に譲って、思い出のビーチへ。それは、父親から受け取った家族写真にあった海です。
そして、その海には、父親もいました。
父親も1人でここに来ていたということは、彗星衝突寸前になって、父親も本当の家族の存在に気付いた、ということでしょうか。クズな父親だな、と思えばそれまでですが、自分が死ぬ最後の瞬間にここに来たのは、間違いなく、死ぬ前に娘を想った証拠です。
離婚して、再婚して、独りにしてしまった娘に対しての罪滅ぼしでしょうか。
娘が父親の胸に抱き着いて「Daddy…」と泣きつくシーン、感動しますよね泣
ぬぅおうおおうううううううう
Dont Wanna Close My Eyes~~♬
※おっと、もう一つの方だった
巨大津波シーン、今見てもヤバすぎでしょ!!
そして、ここの津波のシーンですよ!!
なんといっても、この映画の最大の見どころ!!!
※一番かねかけてるシーン!!!!
衝突後、引き潮によって、サ~~~と波が戻っていく。
この、嵐の前の静けさならぬ、静寂であるが異様な光景が、一度見たら忘れられない!!
超インパクト!!がディープなのだ!
その後、一気に千メートル級の巨大津波となって、押し寄せてくる。
米粒のような存在になった二人は一瞬で波に巻き込まれていきます。
こうして、主役の一人、ジェニーは本作から退場します。
死んでしまうのです。
この展開そのもの、なかなかびっくりでした。こんな感じで死んじゃうのか~~!って驚愕しながらも、なにか考えさせられる死に方。あまり会話せずに沈黙でお互いの意思を確認しあっている感じも、逆に分かり合えた感が伝わってきて良いですよね。この潔い死への受け入れは、ミミ・レダー監督の黒澤フリークに影響を受けているのかもしれません。
しかし、この津波シーンはいつ観てもスゴイ。
よく観ると結構細部までこだわっています。ビルの屋上に逃げ込んだ人々たちが、津波が来る方向から逃げているカットが差し込まれていたり、いつも通り自由の女神は吹き飛ばされていたり。渋滞している道路に波が押し寄せるシーンでは、いくつもの車がものすごい勢いでジャンプし始めて、向こう側からとんでもない津波が来ていることがわかります。
Deep Impact (8/10) Movie CLIP – The Comet Hits Earth (1998) HD
こ、こ、こ、怖すぎる!!!!
この津波シーンが 『ディープ・インパクト』 の好きな映像のところですね!
誰よりも落ち着き、誰よりも国民を落ち着かせた大統領
さて、お次は、モーガン・フリーマン演じるトム・ベック大統領。
彼や彼の側近は、ニューヨークのマンハッタンレベルの彗星衝突という前代未聞の有事に対して、作戦を練ったり、避難民の対応を考えたり、苦悩の日々です。
そんな彼らのテーマは「知恵」と「国民」でしょう。
このモーガン・フリーマン、めっちゃ格好良い。格好よすぎる。
惚れてまうぜ!!
この映画では、政府の乱れ、みたいなシーンはほとんどなく、あまり汚い部分がない設定ですが、気にならないんですよ。(そもそも尺がない・そこは見せ場じゃないのもありますが…)
これは、もうモーガン・フリーマンのおかげというしかないっすよ!
彼の、優しい温和な声色に、強かな勇気ある表情が、なんとも国民(観客)に突き刺さるんですよ。
そんな彼の名言はこちら。
さ、さ、最高すぎる!!!!!
それぞれの思い描く神がどのような姿をしていても、というところもまたこの映画らしいんですよ。
ダイバーシティ、宗教や価値観を超越して、国民、いや人類を想っている感じ。
「信じている」「きっと大丈夫」みたいな言葉が、なぜかめちゃ説得力あるんやな…。
そして!
大統領は、どこかの映画の政府とは違って、口先だけじゃないですよ!
まず、彗星が衝突コースにあることが2年前にはわかり、その日が来ることを知りつつも、政府は最初の1年間は秘密を守ります。そして3つの作戦を準備します。
①メサイア計画=有人宇宙船「メサイア号」を送り込んで、核爆弾で彗星を爆破する計画
(メサイヤ=救世主→この宇宙船が地球を救うという意味!?)
②タイタン計画=核ミサイルで彗星を迎撃する計画
(タイタン=巨人→巨人のごときミサイルが地球を守るという意味?!)
③ノアの箱舟計画=上記作戦の失敗に備え、100万人を巨大地下施設を建造し、避難する計画
(ノアの箱舟=選ばれたものが船に乗るというそのままの意味!!)
この3段構え、めっちゃ良い!!!w
うん、良い!!!!!!!
リアリティがあるんですよね!
多分、実際に政府がこういう対応に迫れられたら、こういう風にすべてのブレインたちが知恵を振り絞って、PLAN Bや次善策みたいなものを用意して、最終手段はこれだ!みたいなのあるはずなんですよね。それが非常に納得させられる内容で知らされるので、うおおおお!と唸ってしまう。
まぁ、やや、民衆が素直すぎる?というところもありますが、あまり気にはなりません。なぜなら、モーガン・フリーマンが神だからです、まさに神の鉄槌!(おい笑)
『2012』よりはマトモな政府!?
しかも、実際にメサイア計画が失敗(分裂しただけで軌道をかえられなかった)時、パニックを警戒して戒厳令(マーシャル・ロー)を敷いていますが、これも冷静にしっかり対応していてなんかめっちゃ現実味がある!アメリカ軍がすべてを強いるわけですから、強制力がありますが、大統領からは威圧的な押し付けというより、国民を守るための強硬策といったことが態度からも言葉からも伝わります。
「ノアの箱舟」作戦でも、政府の対応が結構好きです。政府が選ぶ!って潔く公開しているのも良いですし、ミズーリ州のシェルターへの100万人の選考について「コンピューターが任意の80万人を選ぶ」+「既に選ばれた20万人の科学者、医師、技術者、教師、芸術家」で決めています。そして、おそらく次世代に引き継ぐ必要があるため、50歳以上の一般人は対象外。年齢制限があるのも、しっかり種としての繁栄を考えている証拠です。
ここで、隕石衝突後の空気が浄化されるまで2年間暮らす予定なんですよね。
入口だけで、中までは映像がない(予算上、セットまでは創れなかった?)ですが、なんだか、本当にこのくらいの施設なら国がつくってそうだな~なんて思ってしまうな場所。
※実際、広大なアメリカには、宇宙人研究施設や冷凍冬眠施設があるとかいいますし。。。
この選別を観て、おそらく多くの方が連想するのは、2009年公開のエメリッヒ映画『2012』でしょう。ちゃんと公開する点は、『2012』よりマシな政府ですし、地下都市建設の方が現実味がありますね。最も、『2012』では地下も危ない?のかどうかはわかりませんが。。。『2012』についてのコラムもあるので、ぜひご覧くださいw
◆やっぱひどい!?『2012』のネタバレ徹底考察コラムはこちら!
現在、蔓延している新型コロナ・ウィルスですが、以前オーストラリア政府が島に感染者を隔離するとかいう話がありました。計画は頓挫しましたが、なんだかこの「巨大地下施設」への選別の逆パターンみたいですよね。。。ワクチン接種者のみを地下都市に逃げ込ませるなんて計画、どこかの国がやっていてもおかしくなさそうな。あと、戒厳令を発令して強制力を強いるところなんかも、欧米と日本の現状の違いを感じるようなところで、今みても再発見がある面白いポイントです。
ということで、色々奮闘した政府や大統領も、うまくその葛藤が描かれており、結構好きなんですよね。
英雄の条件は、命を賭けること
お次は、スパージョン・“フィッシュ”・タナー率いる宇宙船部隊。
彼らのテーマは「英雄」と「家族愛」でしょうか。
ここは、まるで 『アルマゲドン』 のような展開ですが、短い尺の中にもドラマを入れ込んでおり、見ごたえあります。フィッシュことタナ―は、かつてのアポロ計画の参加者であり、老練なベテランパイロット。他のクルーたちから、過去の人として少しバカにされ、険悪?なムードでの出発になりますが、ここは 『アルマゲドン』 とは反対かもしれませんね。ああいった展開が好きな方からしたら、「もっとフィッシュ、格好いいキャラにしてくれよ!全人類を引っ張れるような、力強いヒーローでしょ!なんでバカにされた状態で宇宙に出るのよ!!」といった感じです。
しかし、これで良いんですよ!!w
この、いかにも、「過去の人」という一般人じみたところからの登場、ここにやはりこの作品の魅力が見えるんです。スーパーヒーロー感がないんですよ。なので、他のキャラクターたちと重要度がフラットに同じ、という印象なわけです。一人だけスポットライトではないんですよね。
MYLESARONOWITZ_9/DREAMWORKS/PARAMOUNT/TheKobalCollection/WireImage.com
しかも!!
メサイヤは、無事彗星に到着したと思えば、太陽の光によって、オーレンが失明し、ガスは噴き出したガス(ダジャレじゃないですよ!)により宇宙空間へ飛ばされてしまうという悲劇続き。
この、宇宙空間に1人飛ばされてしまうところは、なんとも悲しい。。。
誰も助けに来てくれないことを心得ながら、遠くなる美しき地球。
静寂な空間の中、最後に家族に何も言えずに、自分の死を唐突に感じる瞬間。
この静けさの中で孤独と戦う感じは、『ゼロ・グラビティ』のような緊迫感。
そんな中、なんとか核爆弾をセットして起爆しますが、彗星は「ウルフ」と「ビーダマン」に分裂しただけで、地球への衝突コースから外せなかった。。。
なんじゃとー!!!
しかも、、メサイヤは爆発の衝撃で地上との通信ができなくなってしまいます。
ピンチ!!!
分裂した小彗星が地球に落下した後、地球に近づいたことで通信が復旧、なんとか大彗星の破壊へ動きだします。残された核弾頭で爆破するのです。最後に家族との交信。ここは涙腺崩壊シーンですねw
タナ―は亡き妻への愛の言葉を、失明したオーレンは、駆け付けた奥さんとその子供に対して、自分がまだ眼が見えているようにふるまって、別れの言葉を。これはもう…涙ぽろりちゃうか!
隣の宇宙飛行士が状況を教えてあげているという優しいフォローたっぷり。。。
彼らのチームワークや生きざまが伝わり、ここもじ~~んと感動。。。
ジェニーも親子で死んだのに、また家族の別れか~!!死ぬのか~!!??
と思うのもつかの間、メサイヤ号は、彗星へ突入していく。女性副操縦士のアンドレアも、「最後にご一緒できて光栄でした」と格好いい言葉を残して、いざ、核爆弾炸裂!!!
彗星はこなごなに飛び散り、空には『ID4』のような花火が広がります。
すべての知恵を突っ込んだ政府も格好いいですが、
体を張って命を賭けた彼らがやっぱり英雄です。
リオ・ビーダマンから学ぶ「愛からの誓い」
さて、最後はその花火を高台で見て 『ディープ・インパクト』のDVDジャケットにもなっている、リオ&サラです。
彼らのテーマはいうまでもなく「恋愛」ですが、加えて「誓い」があります。
この映画は、リオ・ビーダマン(おもちゃのビーダマンじゃないですよ!)が天体観測中にとある彗星を発見するシーンが冒頭です。彗星に彼の名前がついているのはその為ですね。
※ウルフ博士のシーンで「フロッピー」や奥行のデカいコンピューターがありますね。当時は最新鋭だったのでしょうが、ガジェットはなかなか時代を感じますねw^^
そんな彗星発見者のリオは、地下シェルターへの避難権を持っていますが、サラというガールフレンドは、避難権を持っていないので、一緒に入れません。なんと!不可抗力が二人を引き離すぅぅ~~と思いきや、リオはなんとサラと結婚することで、妻として避難権を与えます!!
外圧的な結婚のようですが、二人の様子を見るに、どのみち結婚していたんでしょうか。
ここに「愛」が「誓い」になったと思われるメッセージがあると思います。
MYLESARONOWITZ_9/DREAMWORKS/PARAMOUNT/TheKobalCollection/WireImage.com
これでハッピー!!と思いきや、
送迎バスに乗り込む直前で、サラの両親は避難所には入れないことが発覚!!
この、ちょっとうまくいきそうだったが、やっぱダメでした~!感が結構好きですw
サラもサラでせっかく避難権もらったのに、、、両親を見捨てられずに残る。。
うーむ、リオからしたら、残念無念!!!
バスでそう想いを馳せていたリオは、なんとシェルター入り口前で、サラのもとへ戻ることを決意、人混みのなかをかき分けて戻っていきます!!
ちょっと不満げな発言をする両親。
おい、もっと止めろや!!!!www
息子だぞ!!!
って思わず突っ込んでしまいましたが、恋は盲目!!
両親も、一人の男として、彼を認めたのでしょうか。
時が時、両親も急激に成長する息子になにかを感じたのか、お見送り。
リオはバイクに乗ってなんとかサラと合流!(バイクに乗るイライジャ・ウッドイケメンかっちょええwww!!!!)途中、何回もそれっぽい人を見かけているのが良いですね。なかなかみつからん!とハラハラしている中、サラを発見!
そして、 サラの両親から、 サラの妹である赤ん坊を渡されると、そのまま高台へGO!!!
おい、 サラ両親、結局置いて行かれるのか!www
何のために サラは残ると決意したんや。。。
と、ちょっとここも思ってしまったが、若気の至り!!
しかも、後ろからは1000メートル級の大津波が接近!!!
それどころじゃないんだ!!!
サラ両親も、事態が事態、娘を自立した一人の人間として見込んだのでしょう。
うおおおおお!!!!!!!!
先述しましたが、やっぱここのシーンが熱い!!!!
ちょっとした高台登っただけで助かったのは、すこし不思議なところでもあるのですが、さすがにリオとサラも死んだら、主役級が皆殺しになってしまうと思ったのか、彼らはなんとか助かる!
良かった~!!!!!!
流星シャワーを見上げながら、なにかを誓いあう二人。
そう、ここに更なる「誓い」が見られるのです。
預かった赤ん坊の未来でしょうか、これから再建されていく地球のことでしょうか。
彼らは、なにを想い、なにを誓ったのでしょう。
こうして、映画は閉幕します。
主人公は「地球人類」だった
こうしてみると、主役は誰なのかと言われれば、
それは「地球人類」といえるのではないでしょうか。
それぞれ、「地球人類」として彗星衝突と戦ったキャラクターたちの生きざまが描かれています。
こういう映画では「内輪揉め」は前半や中盤では王道路線ではありますが、ほぼほぼそういうシーンがありません。しかし、なくてもそんなに気にならないのです。
彼らは、自分の命だけを考えて走った人たちではありません。
彼らは、それぞれの「仕事」を全うするために動き続けました。
そこに、なんかこの映画が伝えたいと思われる「人の温かさ」を感じるんですよね。
「俺が助かるんだぁあ!!」みたいな描写は一切ない、それぞれが地球人類として戦うドラマには、それぞれに色があってその人生を語っています。
MYLESARONOWITZ_9/DREAMWORKS/PARAMOUNT/TheKobalCollection/WireImage.com
自らのキャリアアップを実現しながら、最後は父親と和解するジェニー。
彼女は、国民に真実を知らせるという「地球人類の為の仕事」を遂行しながら、ずっと関係が悪かった父親と打ち解けるという「家族への仕事」を果たしました。
大統領とその側近。彼らは、3段構えの計画を練り込み、パニックが起きないように国民を冷静に誘導していくという「地球人類への仕事」を遂行しました。誰よりも多くの人間を想い、誰よりもその頭を悩ませた彼らは「国民の為の仕事」もしています。
タナ―はじめ、彗星爆破を行ったメサイヤ号のクルーたち。彼らは、英雄です。命を張って地球を救うという「地球人類の為の仕事」を完遂しますが、最後に家族と別れを告げることで「家族の為の仕事」だったことを自分自身が気づくのです。
リオとサラ。リオは彗星を発見することで「地球人類の為の仕事」をし、サラとリオは結婚することでその未来を誓いあい、そして妹を預かり「夫婦としての仕事」をしています。
明日で地球は終わり――あなたはどう過ごすか?
全員、地球人類や家族のために動いている。
なぜか?
それは、人は本当に「明日で地球は終わり」と分かった時に、
大切な人を想うからではないでしょうか。
自分の命が大切なのは勿論ですが、自分だけ助かったところで、その後どうなんだろうということがこの映画は間接的に伝えてくれます。
人は、「今すぐ死ぬぞ!」となったら、自分の為に全力で動き周りのことなど気にしていられないでしょう。しかし、不思議と「いついつ死にます」と前もって宣告されると、一人だけなんとか助かろうなんて思えないのではないでしょうか。
特に、数か月や数日等のカウントダウンのように「死」や「終わり」が分かっている場合、敢えて自分だけが生き残るように考えるよりは、大切な人がまず思い浮かぶのではないでしょうか。
それは、このテーマに限ったことではなく、
余命を告げられた患者や戦争で死ぬことを覚悟した兵士たちも同様なはずです。
本作でいえば、特にとても裕福な家庭でもなく、また、国の中核で動く人間でもないような、一般市民であればなおのこと。しかも、彼らはべつにとくに交わるわけでもないので、作為的な流れも感じず、とても自然に「それぞれの人生」を追い、そこに魂を感じることができるのです。
そこが、この映画の群像劇が伝える、最大の魅力なのです。
この辺は、どこか女性監督であるミミ・レダー監督の才覚が光っているのではないかと思います。
インパクトある描写やヒーロー感に頼っていない今作は、女性らしい命へのリスペクトを感じることもできるのです。
SFというより、ヒューマンドラマに近いのかもしれませんね。
この映画、科学考証はどうなのか?
さて、盛沢山のトピックですが(笑)、
一応SFコラムなので、最後に、この映画の科学考証について。
自然に気になる点やツッコミどころもあると思いますが、
日本スペースガード協会というNPO法人がそこにすこし触れているので、参考にさせていただきました。
参考:日本スペースガード協会
たった一度の観測で彗星の軌道が決定するのか?
こちらは、「少なくとも3夜、できれば3か月の観測が必要」「追跡観測をしてから初めて言えること」とのことで、天体の軌道決定はすぐにはできないもののようです。
また、ウルフは「確認観測」をしただけなので、実際は名前に含まれるべきではないようです。
「ビーダマン彗星」というのが本来は正しいわけですね。
そもそも、小惑星の軌道は数百年先までわかるものなので、唐突に2年後に来るっていうのも、少し無理があるようですね。
1年近く彗星の存在に誰も気づいていないなんてことある?
作中でどこまで語られていたかはわかりませんが、衝突の2年前に見つけた彗星を、1年前の段階になるまで誰も発見しなかったというのは、不自然のようです。ただ、政府は見つけていたけれども、公表していなかった、というようにも受け取れるので、ちょっとここはどこまで指摘していいのかは定かにはなりませんね。
彗星は、最初から尾を引いて衝突しているが?
演出の問題でしょうが(笑)、実は、彗星は太陽に近づいて初めて尾が伸びるらしいです。
直径2kmの小彗星が落下したら、もっとひどいことになるのではないか?
ここが一番致命的のようです笑
あんなサイズの彗星が飛んで来たら、衝突直後は映画の展開で概ね正しくとも、その後は人類文明が壊滅レベルらしいです。。。衝突によって巻き起こされた塵で太陽光が当たらなくなり、大変なことに。リオとサラも実はあの後死んでしまう。。。
とまぁ、指摘すれば沢山出てくるのでしょうが、 『アルマゲドン』 よりは科学考証がしっかりしているとも言われています。
批評家からは「興行収入は成功したが、映画としてはひどい」みたいなコメントが多かったと聞いていますからね。
『ディープ・インパクト』 はNASAの協力があっただけに、宇宙ステーションや訓練シーン、彗星の上での重力作用の小ささ、太陽光によるガス噴射などの描写などはなかなかリアリティに迫っているようです。津波の効果などもおおむね正しいようなので、そう思うと、あまり気になるツッコミは批評家からはそんなには多くない印象です。結構スゴイですね!
後に、NASAのディスカバリー計画の彗星探査機の名前にもなってますしね…。
ちなみに、 『アルマゲドン』 は、第71回アカデミー賞を受賞しつつ、第19回ゴールデンラズベリー賞で最低作品賞などにもノミネートされています笑
また、どちらもビックネームゆえに、低予算のB級映画がいかにも「続編」っぽい名前で創られているのは、共通しています笑
一体いくつあるんだ…ディープ・インパクトも「2008」、「セカンドクライシス」、「2016」、「2018」などなど…気になる方はぜひ観てみましょう!!
総合評価、やっぱり高いんだよなぁ!
ちなみに、同系統の「隕石もの」をモチーフにしながらも、発想がまったく逆であある作品があります。
小説でいえば『地球移動作戦』、日本映画でいえば『妖星ゴラス』(1962)。
これらは、なんと向かってくる隕石に対して、「地球を動かす」という奇想天外な展開を繰り出すのです。スゴイ、発想の規模が凄すぎるw まさにコペルニクス的転回!!
さて、そんなこんなで、今回の考察コラムも終わりにしていきますが、
やっぱりディザスタームービーは観ていて面白いですよね。
映像的なインパクトもあるし、それに対抗するハラハラミッションもあるし、その中で芽生える家族愛や恋愛があったり。いつの時代に観ても楽しめる作品だなと思います。
個人的に、この作品はとても総合評価が高いです。
ヒューマンドラマとSFをうまくハイブリッドさせていますし、結構リアリティのある展開(完璧を求めたらきりがない)が好きですし、それぞれの群像劇がしっかり生きざまとして描かれているところが一番の魅力、そして、観終わった後になにか考えさせられるというか、一日を大事に生きよう!みたいな気持ちにもなります。
ということで、今回は 『ディープ・インパクト』 のネタバレ徹底考察コラムでした!
またこういった観点で見直してみるのも面白いかもしれません♪
それではまた!
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今後も日本のSFを盛り上げていきます!!!
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