SF映画『ブレードランナー 2049』のネタバレ感想で徹底考察・解説!わからない!面白くない?という声がある一方、批評家の評価は高い!
Kやジョシとウォレス社・ラヴの構造複雑wレイチェルはなぜ出産できたのか・7型の証拠も!続編のネタバレ解説!
いざ、SFの世界へ…!
ブレードランナー 2049 のネタバレ感想・考察・徹底解説 (Ryo)
本日は、2017年公開のSF映画『ブレードランナー 2049』を徹底解説!
駄作・面白くない・分からないなどの声が多い一方、ブレランファンや映画批評家からは非常に評価が高いですんですよね。
最近、ドラマシリーズが企画中であるというニュースや、アニメ版が11月から配信された話など、ブレランも再び勢いを増して盛り上がりを見せています。
そんなブレラン再熱ブームをつくったのが、この作品。
『ブレードランナー 2049』。
今回はどうしてここまで賛否分かれてしまっているのかも踏まえ、16項目で考察してまいります!
▽1作目の復習もしたい!と言う方は、こちらのネタバレ徹底考察コラムより!!
- ドゥニ・ヴィルヌーヴ×リドリー・スコットの話題作!
- わからない?何を残して、何を壊したのか?
- ブレランらしさを追い求めた結果…ちょっとやりすぎ?
- 続編、実は浮上しては消えていた…長すぎw
- 前日譚の短編映像3作品から描かれる、2049年の世界
- 大停電→食糧危機→ウォレス社→ネクサス9型→Kへ…
- サッパー・モートンはワカンサからの脱走衛生兵だった!
- スキンジョブ=レプリカントがレプリカントを抹殺!
- レイチェルが7型である証拠あり!寿命は4年だったのか?
- 出産神話について詳しい言及無し。人間と機械の境界線は?
- 「自分はレプリカント→自分は人間?」という展開へ
- ウォレス&ラヴが生殖機能を欲しがっているワケとは?
- 30年間子供を放置プレイ!?デッカードに心あるのかw
- 俺はレプリカント→俺は人間?→俺は目くらましのレプリカント!
- 溺れかけるデッカードw オフ・ワールドが見たいぞお!!
- 雪=雨のオマージュ?重要な哲学の掘り下げがなかった…?
ドゥニ・ヴィルヌーヴ×リドリー・スコットの話題作!
今作は、1982年公開のSF映画『ブレードランナー』の続編になります。2017年公開。
なんと、前作の主演だったハリソン・フォードが引き続き、リック・デッカード役で出演!80歳くらいなのにアクションしているのほんとすごいですよねw
この登場は、まさに『スターウォーズ/フォースの覚醒』のように時を経て登場したハリソン・フォードでしたよね!当時日本でも大騒ぎだったのでは!
しかも、これのおかげで、ハリソン・フォードは9年ぶりに来日するという!感謝!
また、1982年から35年経っていますが、前作の監督だったリドリー・スコットも製作総指揮に入っています。リドリー・スコットは、CMディレクターあがりの監督なので、「画」をつくるのが非常に得意な監督でもあることから、「またあのブレランみたいな世界が見れるのか!」と興奮した方は多いのではないでしょうか。
※1作目でも脚本に携わったハンプトン・ファンチャーも参加してますね!
そして、監督は、今年も『デューン/砂の惑星』で話題を呼ぶことになったドゥニ・ヴィルヌーヴ!ドゥニドゥニですね。2017年は、不思議な魅力に包まれたSF映画『メッセージ』が公開された都市で、アカデミー賞を受賞して脚光を浴びていました。
▽2021年!ドュニドゥニ渾身のデューン!なんと5回目の映像化だった!?
▽ドュニヌーヴ監督のSF作品といえばこれ!”彼ら”の世界では、時間は流れないのか?
ドゥニドゥニは、以前から『ブレードランナー』の大ファンです。「最良のSF映画」として三つあげるならば『2001年宇宙の旅』、『未知との遭遇』、そして『ブレードランナー』だと、以前インタビューで答えていました。
作風は、リドリー・スコットがつくりあげた「酸性雨」「暗い」「雑多な新宿×ハイテク都市」というイメージから、少し変わった情景になっています。というのも、(当時は近未来である)2019年から更に30年経過していますからね。敢えて「リドリー・スコット風」は残しまま未来に舞台を変えたのは秀逸でしょう。実際、彼はカナダ出身の監督なので、「アメリカ人には想像できない未来」を描くのに的確だったそうです。
※撮影は、ドゥニドゥニとは3組目になるロジャー・ディーキンス。相性も抜群!
主演には、 『ラ・ラ・ランド』(16)で一躍有名になったライアン・ゴズリング。今回は、かなり抑えめの演技で孤独感があふれ出ています。レプリカント?らしいようなちょっと無表情らしいところや切なく感じさせるような様子に惹きこまれます。
ただし、ライアン・ゴズリング目当てでこの映画を見に行くと「なんだ意味わからん!!w」ってなるので要注意ですねww
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わからない?何を残して、何を壊したのか?
そうなんです、先に結論言うと、この映画、「ちょっとやりすぎた」感はありますw
3時間近くあって非常に長いですし、大激戦のような盛り上がりのあるSFシーンがあるかというと、正直そこまでないです笑
「ブレランファン、これなら喜ぶだろう!」という視点では、非常に巧妙につくられていますが、一般受けはあまり芳しくなかったかもしれません。
ただ、この「やりすぎ」「哲学的すぎ」「わからない」というのは、批評家の間では好評になることがあります。今作も「傑作の続編は失敗する」というジンクスがある割には、評価が高い印象です。何を壊して何を残すのかが問われる続編、ほんとよく引き受けたと思いますよw
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実際、第90回アカデミー賞では5部門にノミネートされ、2部門を受賞しています。
Rotten Tomatoでも、支持率88%です。一作目が89%だから大差ないですよね。
どちらかというと、ひねりのあるSFミステリーという観点が好評だったのでしょう。
しかし、興行的には失敗。1.5億ドルの製作費に対し、アメリカでは9,200万円の興行収入です。勿論、世界的にみれば2.6億ドル稼いでいますが、最初の上映日からさほど盛り上がりを見せなかったのも事実なのです。
ブレランらしさを追い求めた結果…ちょっとやりすぎ?
色々要因はありますが、調べてみたところ、以下のようなものが考えられます。
・そもそも1作目を知らない・興味ない・好きじゃない人が多い
(=攻殻機動隊、マトリックスでいいじゃんと思ってしまう若者が多い)
・上映時間が長いため1日当たりの上映回数が少なく、回収率が悪くなる
・ブレランファン向けすぎる・哲学的すぎる・複雑すぎる
・「人間とは?」みたいなテーマが主軸で、迫力や盛り上がりが対してない
・主人公Kに感情移入できない・ストーリーが途中で分からなくなり眠る
・上映した週末は天気が良かった(これは…笑)
中でも、個人的には、「ブレランファン向きすぎた」が大きな要因かなと思っています。
「ラストやストーリーの意味は、観客に任せる」というスタイルはしっかりと引き継いだのは、ある意味リドリー・スコットへのリスペクトであり、またファンへの気遣いである一方、「35年も待ったのに結局またこういう落ちか」みたいに考える人も出てきてしまいます。
なので、「ブレランファン向け」に作った割には、ブレランファンの一部からも敬遠されてしまうような存在になってしまいました。降りしきる酸性雨や新宿のようなシーンもあまり見られないですしね。絵的にも不満な方が多かったのもあるでしょう。
残したのが「ストーリー全体に眠る謎」「人間とはという哲学」であり、
壊したのが「リドリー・スコットらしい風景」「技術発展の方向性」なのでしょう。
しかし、こんな名作の続編をつくってくださったことにまずは感謝でしょう。
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続編、実は浮上しては消えていた…長すぎw
尋常ではないプレッシャーがあったと思いますし、監督も主演俳優も「比較されること」は念頭に置いて取り組んでいたらしいです。それはそうですよね、あれだけヒットした作品の続編なんて、なかなか難しいはずです。
前作のコラムで「ハリソン・フォードとリドリー・スコットで対立」があったことを述べましたが、それもひとつ原因で長らく続編が公開されることはありませんでした。
続編といいつつ、デッカードまったく登場無し、では、作りにくいからですね。
ハリソン・フォード自身、長年あまりこの作品に好意的でなかったのもあり、積極的な姿勢はありませんでした。
続編の話は以前から浮上しては消えての繰り返し。
最初は、1999年。
K・W・ジーターによる映画の続編小説『Blade Runner 2: The Edge of Human(邦題『ブレードランナー2 レプリカントの墓標』)』を元に『Blade Runner Down』と名づけた続編が企画されましたが、権利上の問題から消えてしまいました。
次に、2007年。
ここでは、リドリー・スコット本人が、『メトロポリス』と名づけられた続編の開発していると公言したものの、結局特にその後無し。ちーん。
2009年6月。
リドリーと弟のトニー・スコットが、『ブレードランナー』の前日譚『ピュアフォールド』に取り組んでいると報じられますが。資金調達の問題により中止…。
兄弟でこのジャンルのSF映画って、『マトリックス』やないかい!って感じですね笑
2011年には、あのクリストファー・ノーランが監督候補になったことも。
天才ノーランが続編つくったらどうなるのかも気になるなぁww
異常に緻密な設計になりそう。
そして、2014年。
ようやく、リドリー・スコットが製作総指揮にまわることが発表されます。
こうして撮影はヴィルヌーブ監督のもと進みます。
いやぁぁ、長すぎるw
どれだけ待たせるんだ!!!!!!!
また、ヴィルヌーブ監督は、リリース前に、今回の『ブレードランナー』は複数バージョンは無いとくぎを刺していました。これは、前回の『ブレードランナー』は7つのバージョンが存在していたことから発言しているのでしょう笑
さて、それでは、そんな長年の宿願が果たされた今作、ストーリー考察へ!
前日譚の短編映像3作品から描かれる、2049年の世界
舞台は、前作の30年後の2049年。
引き続き、環境破壊が深刻な地球です。
ただし、今回は、実は本編の前に3作の前日譚がありました。
この3作品で、2049年までなにがあったかが描かれているんですね。
最近、こうやって映画が始まる前の少しを公開するというのがちらほら見れますよね。観る方はこれでより気持ちをスタンバイしてテンション上げられますし、個人的には結構いい作戦だなと思いますw
三作品、Youtubeにあがっていますので、こちらにあげておきます。
2022:Blackout
【渡辺信一郎監督による前奏アニメ解禁!】「ブレードランナー ブラックアウト 2022」
2036:NexusDawn
【『ブレードランナー 2049』の前日譚】「2036:ネクサス・ドーン」
2048:Nowhere To Run
【『ブレードランナー 2049』の前日譚】「2048:ノーウェア・トゥ・ラン」
短編三作品をふまえて、2049年までになにがあったのか、まず軽く解説しようと思います。
一作目の舞台は2019年、その翌年の2020年、寿命の制約がないネクサス8型が誕生します。彼らは眼球に識別番号みたいなものが植え込まれており、これは『2022:Blackout』でも登場します。
その『2022:Blackout』の舞台である2022年、「大停電事件」が勃発します。
この大停電は、レプリカントたちが「自由になるため」に仕掛けたテロみたいなもので、誰がレプリカントかというデータさえ消えれば、彼らは人間と同じように暮らせると考えたのです。
しかし、この事件をきっかけに、レプリカントは製造禁止になってしまいます。
タイレル社も崩壊します。
この隙をつき、ウォレス社が誕生します。
大停電→食糧危機→ウォレス社→ネクサス9型→Kへ…
二アンダー・ウォレスは、遺伝子組み換え食物を開発し、しかもそれを無償提供したことで、世界を食糧危機から救いました。ここからが『2036:NexusDawn』で描かれるところですが、ウォレス社は、ネクサス9型を開発し、「再び」レプリカントが人間の奴隷となる時代が始まったのです。
更に面白いのが、旧型のネクサス8型レプリカントを解任(抹殺)する専任捜査官ブレードランナーは、このネクサス9型によって行われるのです。
8型は、大停電以降、ひっそり隠れて生きているものもいます。
そんな「反乱分子」を9型によって殺させる。つまり、同胞殺しをしているのです。
いくらレプリカントといえ、同じ人造人間を殺すのか?
と思うところですが、9型は『人間に絶対服従』とされているので、その任務を遂行するために生きます。この同胞殺しの直前が描かれるのが、『2048Nowhere To Run』ですね。8型のサッパー・モートンは、それまでバレずに生きていましたが、この短編映像のなかでブレードランナーに追いかけられてしまうきっかけが描かれています。
そして、2049年。
『ブレードランナ 2049』に繋がっていきます。
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サッパー・モートンはワカンサからの脱走衛生兵だった!
冒頭、瞳がドアップで表示されますが、これは旧作のオマージュですね。
前作の瞳については諸説あるのですが、おそらくロイ・バッティではないかというのが濃厚らしいですね。なぜなら、本当の主人公はデッカードではなくロイ・バッティだったからという、レプリカント視点の物語とされているからです。
今回の瞳は、ネクサス9型のK。製造番号はKD6-3.7です。
上述の通り、彼は旧型解任のミッションを持っており、今回はとある農場に来ています。
その農場の主は、食用虫を飼育するサッパー・モートン。
彼は、ワカンサという惑星から脱走した衛生兵です。
後で繋がってくるのですが、実は彼はレイチェルの出産に立ち会った衛生兵でした。
レイチェル自身は帝王切開の後に死亡してしまいますが、彼女を助けようと努力したのがサッパー・モートンでした。
しかし、そんな彼も、遂に解任の時が。
Kにより、冒頭で抹殺されてしまいます。
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そんなKは、同僚からは「スキンジョブ」と呼ばれます。これは「人間もどき」「外見だけ人間らしくしやがって」という意味が込められていると考えられます。お前も所詮はレプリカントなんだぞ、という意味でしょう。
サッパー・モートン殺害後も、なにか心理的障害を負っていないか、心理検査を受けています。
スキンジョブ=レプリカントがレプリカントを抹殺!
早速おもしろいなー!って思うのは、このレプリカントがレプリカントを殺す構造であること、そしてそのレプリカントは自分がレプリカントであることを知っている点にあります。
前作のブレランでリック・デッカードが「レプリカントなのか?」は観客に委ねられ、デッカード自身は自分が人間と思い込んでいた点と比較し、今回は、逆を行ったように感じますよね。Kは自分がレプリカントだと知っており、そしてその仲間を殺すために動いている。なにもかも「人間社会の為」の道具になり果てており、「利用されている」という実感がないのが興味深い設定です。ブレランファン的には、嬉しい続編的設定だったのではないでしょうか。
ただ、冒頭から突然始まるので、旧作の『ブレードランナー』と短編三作品を知っていないと、おそらく理解できない描写かと思われますw
特にサッパー・モートンが8型で、その9型がなぜ同胞を殺しているのか等、そもそもなんで普通に地球で暮らしているの?っていう部分がよく分からないまま進むので、予習はあった方が理解しやすいでしょうねw
Kは抹殺任務の後、庭の枯木の根元にトランクケースみたいなものが埋められていることを発見します。この辺の、スピナーからドローンが浮上して付近を調査していくシーンは、なんだか旧作より技術発展したなぁ~と思わせるところですよね。
まさに現代版ブレードランナーという実感!
※現代版といえば、ホログラムAIのジョイも近代らしくていいですよね!
ちなみにジョイ役のアナ・デ・アルマスは、2021年の007でボンドガール!
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Kはトランクを調査すると、約30年前の女性の遺骨だという事がわかります。しかも、その女性は帝王切開をしていたのです。レプリカントの出産があったことが明るみになって混乱することを予期したKの上司であるジョシは、Kに痕跡を消すように命令します。
この辺から、ブレランファンは徐々に1作目とのつながりを感じてドキドキしてきますよねw どうつながってくるんじゃぁ!?!!?っていう!w
レイチェルが7型である証拠あり!寿命は4年だったのか?
この遺骨はレイチェルのものなのですが、実は調査シーンで「N7FAA52318」と記載のある番号が見えます。あれは「ネクサス7型」という意味でほぼ間違いないはず。つまり、6型と8型の間には、タイレル社長が開発していたレイチェルのような「出産可能なレプリカント」が存在していたのです。
※7型についてはしっかりした明示がないので、ここが唯一の証拠では?
Kは、ウォレス社でのメモリーバンクから、2019年に逃亡したレイチェルの遺骨であることに加え、当時のブレードランナーであるリック・デッカードと恋愛関係にあったことまで知ります。出産の際に死亡したこともわかりますが、ここでは「出産が原因で死亡」したのか「4年の寿命で死亡したのか」までは明らかになっていません。
つまり、監督は「レイチェルの7型は、4年の寿命制限があったかどうか」を観客の判断に任せているんですね。もしかすると、4年の寿命リミットがあることを知っていたデッカードが、敢えて死ぬ直前までには出産するように考えたのかもしれません。その辺は、明示されていないのでなんともいえないのですが、「ブレードランナー」らしい判断の委ね方だなとドュニドュニのこだわりに感激しました。
WarnerBros./Photofest/MediaVastJapan
ただ、デッカードがレプリカントの場合、時代的に彼も7型になるので、レイチェルもやはり寿命制限はなかったという論理になります。デッカードは、2049年も生きていますから。7型は総じて「子供を産む」ために設計されたレプリカントであり、デッカードも「レイチェルに好意を抱き、子供を産ませる」というようにプログラムされた(記憶を植え込まれた)存在だったのかもしれません。ここも明示せずにうまく推察させるように誘導しています。
出産神話について詳しい言及無し。人間と機械の境界線は?
この映画が批判される大きな要素として、同時にこのレイチェルの「出産神話」「奇跡」があります。どうしてレプリカントが子供を産めるのか、その根拠については、以後もまったく語られません。
レプリカントが人間に近づいていき何をもって区別するのか、という哲学が大きな波紋を呼んだ映画であるのに、子供まで産めたら本当に人間と一緒になってしまいます。というより、そこの「境界線」を秀逸な映像と共に描いていくのが『ブレードランナー』という映画であったのにも関わらず、出産はなんとなくできていました、で終わるとちょっとブレランファンは置いてきぼり感があるんですよね。
3時間もあるので、最後にはちょっとくらい明らかになるのかなとおもいましたが、結局それも分からずじまいなので、ちょっとモヤモヤが残ります。「生殖活動」という人間の特権を、レプリカントも行使することができるのなら、地球上に必要な生命はレプリカントのみでも良いのかもしれません。もう少し、ここにフォーカスした作品でも良かったのかな、というのは個人的な感想w
話を戻すと、Kは、この「妊娠」の話をもっと探ろうと、当時のデッカード同僚であるガフを尋ねます。前作同様、折り紙を折っていましたが、ガフからは特に情報は得られず。
※続投はたしかハリソン・フォードとガフ役のエドワード・ジェームズ・オルモスのみ!!
現場抹殺の為に現場に戻ると、枯木の根にとある数字を発見。
「6-10-21」という数字です。
この数字、実はKの記憶にある数字でした。
それは、木彫りの馬の玩具に刻んでいた数字です。Kは自分がレプリカントであることは知っているので、これも疑似記憶だと考えてきました。
ここから、物語は大きくうごめいていきます。
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「自分はレプリカント→自分は人間?」という展開へ
なぜなら、Kは「自分はレプリカント」という考えから「自分は人間ではないのか」という考えに変化していくからです。「自分は人間だと思っていたら機械だった」みたいな話はありがちなオチかもしれませんが、このブレラン設定ありきの逆パティーン展開はなかなか好きです。「そう来たか!!」という印象ではないでしょうか。
どうして、Kは自分が人間だと思うようになったのでしょうか?
それは、以下の情報から導き出された答えでした。
・2021年6月21日の出生記録に同じDNAを持つ男女2名が存在していた
・その男女2名はサンディエゴの孤児施設に預けられていた
・サンディエゴの孤児施設は、自分の記憶の中にある「木馬を隠した」場所だった
・孤児院の記録から、男女2名の子供のページだけ切り取られていた
これらの情報から、Kは、「自分はサンディエゴの孤児施設で育った(人間の)子供ではないのか?」と考えるわけですね。メイドAIのジョイも「生まれてきた証拠」とKを祝福。
ちなみに、木馬は、前作でも「自分がレプリカントか人間か」の境界線の象徴として登場したユニコーンのオマージュでしょう。
この物語は、Kの視点ともう一つ大きな視点で動いていきます。
それはウォレス社の視点です。
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ウォレス&ラヴが生殖機能を欲しがっているワケとは?
ウォレス社長は、9型を開発したとはいえ、「生殖機能」まで開発することはできませんでした。その為、タイレル博士が発明していたその生殖技術をなんとか復活させたいと考えています。なぜか?
なぜなら、生殖機能があれば、人間に忠実なレプリカントをもっと楽に生産できるようになります。オフ・ワールドで労働しているレプリカントを産むのもレプリカント、という構造になってしまえば、ウォレスはほぼ自動的にレプリカントを「支配・増殖」することができると考えんですよね。まるで「人間を奴隷として、奴隷の間に結婚させる」みたいなヒエラルキー社会の投影のようにも感じます。おそろしや。
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そこで、ウォレスは片腕であるレプリカントのラヴに、レイチェルの子供を見つけるように命令。
ラヴは、こっそりレイチェルの遺骨を盗み出し(こっそりといっても一人撃ち殺していたけどw)、こっそりKの後を追跡します。
前作までは、【人間=ブレードランナー】VS【レプリカント8型】という単純な戦いの構図だったのが、今回は{【人間&ブレードランナー=レプリカント9型】VS【ウォレス社&レプリカント9型】} VS【レプリカント8型】という相関図になっており、ちょっと初見だとわかりづらくなっている所以でもあります。
Kは、自分の記憶が本当の記憶なのではないかと考え、レプリカント用記憶作家のアナ・ステリン博士を訪ね、誰の記憶を鑑定してもらった結果、「本物の誰かの記憶」と泣きながら言われてしまいます。疑似記憶ではなかったことに、この映画で初めて「感情的」な表情をみせるK。ここもまた、よく考えると「レプリカントが、自分の記憶の正体を知って怒っている」という、なんとも人間らしい葛藤をしていることに気が付きますよね。
30年間子供を放置プレイ!?デッカードに心あるのかw
Kは、ジョシには嘘の報告をし、エマネーター(携帯端末)にジョイを連れて逃亡。木馬の材料分析から放射線含有量を調べ、それがラスベガスであることを突き止めます。前作の酸性雨の印象とはがらりと異なる「地上も空も赤っぽい」その地で、Kはデッカードと遭遇。
デッカードはそこでKに、レイチェルが妊娠したことや、子供を仲間に委ねたことなどを打ち明けます。なんと、デッカードはその後、生まれた子供とは一切会っていないというのです。
「時には誰かを愛するために他人にならなければいけない」
その言葉からも分かるように、彼は、発見されるリスクを避けるために敢えて他人になり果てたのです。
しかし、ちょっといくらなんでも、父親だから30年間も放置するのはどうなのかな?とも思ってしまいますw
可哀そうww
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発見されるリスクがあるとはいえ、愛したレイチェルとの間に生まれた「自分の子供に会いたい」と思うはずなのですが、、あまりデッカードからはそのような想いは伝わってきません。ここは、むしろレイチェルが報われない気がしてしまいます。そもそもリスクありありでの逃避行だったのですから、子供と一緒に逃避行すれば良いのでは、、、と思ってしまいました。まぁ、デッカードもレプリカントでした、ならば、彼に心がないのでこういった合理的選択ができるのかもww
一方、ウォレス社側は、ラヴがジョシを殺害。ジョシの端末を利用してKがいるラスベガスに向かい、そこでKと戦いを始めます。デッカードもアクションしていますが、ハリソン・フォード80歳近いから、さすがにそこまで頑張らなくても!!って思ってしまいますw
いや、80歳とは思えないほど驚異的な体格と若々しさなんですけどね!
この乱闘で、エマネーターが破壊されてしまい、ジョイは消滅!
Kにとっての恋人的存在でもあったジョイはAIでしたが、なぜかかなり寂しいものがありました。いくらAIといえども、大切な存在には変わりないことが伝わる、これもまた現代版ブレードランナーらしい死に方でした。ラヴはデッカードだけ誘拐して逃亡。
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俺はレプリカント→俺は人間?→俺は目くらましのレプリカント!
ボコボコにされたKでしたが、デッカードが言っていた「仲間」により助けられます。彼らはレプリカント解放運動を行っています。そして、そのリーダーであるフレイザから、レイチェルの子供は女児であることを明かされます。
つまり、Kは、デッカードとレイチェルの間に生まれた「人間」ではなかったのです。
目くらましの為に創られた「コピー」「おとり」でしかなかったのです。
Kの記憶は、ステリン自身の記憶が植え込まれていただけで、ステリンが「本物の記憶」と言って泣いていたのは、自分の記憶と一致していたからだったのです。
なんとー!!!!!!
ここにきて、またも大きな「騙し」が発動したわけですね。
「Kは本物の人間だったのか!」と思わせつつ、やっぱりレプリカントでした、に持っていくというドSプレイ的な展開。ライアン・ゴズリングの演技も非常に目を見張るものがあり、ちょっとの表情で切なさや困惑を表していきます。
「自分だと思った?ここの誰しもが、自分だといいと思うの」
リーダーが言い放ったこの言葉は非常に印象的であると同時に、レプリカント9型が主人公のこの『ブレードランナー2049』を代表するメッセージでもあります。
フレイザは、解放運動メンバーとレイチェルの娘を守るため、デッカードを殺害するようにKに依頼します。デッカードがラヴやウォレス社長によって拷問されて、自分たちのことや女児のことがバレる前に、殺しておくのだ!ということですね。
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溺れかけるデッカードw オフ・ワールドが見たいぞお!!
ウォレスは、案の定、デッカードに詰問。生殖技術がどうしても欲しいんですね。
彼は、再生したレイチェルを用意しますが、「目は緑色だった」と見抜いたデッカードは拒否。このレイチェルは、結構旧作と似ていたので、よく準備したなー!って感激しましたw
あの独特な髪型や肩パット?はなかなか特徴的なんですよねw
「くそ!」と思ったウォレスは、デッカードをオフ・ワールド(地球の植民地ですね)で拷問にかけようと考え、ラヴはロサンゼルス空港へとスピナーで移動します。
※なんかわざわざオフ・ワールドへ運ばなくても拷問器具くらい沢山ある気もしますがw
おお!遂に、ブレラン世界の宇宙が見れるのかぁあ!!!!!!
と期待したのもつかの間、宇宙空間へ行く前の空港に着く前に、Kが奇襲を仕掛けます。
海岸?みたいなところで死闘した結果、ラヴを殺すことに成功。
途中途中、拘束されたデッカードが溺れかけているのですが、ちょっとw80歳だぞ!、いたわった方がいいんじゃないか!?と思ってしまうのは僕だけかw
※インディージョーンズやスターウォーズのハリソン・フォードなら、あんな拘束器具なんかぶっ壊して、飛行車の天井でも突き破って、戦闘に介入してきて、敵の首を羽交い締めにしてくれそうだが、、、と考えるとちょっと寂しくも感じたというのは内緒w
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雪=雨のオマージュ?重要な哲学の掘り下げがなかった…?
そして、ラスト。
Kは、デッカードを実の娘であるステリンと再会させるべく、研究所へ。
デッカードを見送った後、Kは降り続く夢を眺めながら目を閉じてエンディング。
この「雪」は、前作の「雨」のオマージュでしょうか。
ロイ・バッティが、雨のように記憶も流れて自分たちは消える、みたいに言っていたように、Kも雪が降り積もっては溶けるように、目くらましの存在としての意味をなくした自分も消えるべき存在だと悟ったのでしょうか。
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こうして終わりを迎えた『ブレードランナー2049』ですが、まず、3時間はちょっと長いですよねw あまり劇的なアクションシーンもないですし、ハリソン・フォードは溺れかけますし、今だからこそ見たい宇宙のオフ・ワールドも焦らされた結果、結局出てこないです。加えて、肝心な出産神話の真相も分からずのままなので、少し映画的には「地味」に見える作品です。
どちらかというと、サスペンス映画(『ブレードランナー』もそうだがw)としての面白さがあり、ブレランファンの中でも「相変わらず謎が多くてよかった」派と「いい加減謎は解決しようよ」派で分裂してしまったのかもしれませんね。
個人的には、ブレランはどちらかというとサスペンス・哲学要素が強い作品なので、「出産の奇跡」や「デッカードが娘を放置プレイ」あたりは、もう少し掘り下げてメインにしてもよかったのかなと思います。人間と機械の境界線というテーマが醍醐味であった作風なのに、ちょっと適当に流している感が否めないんですよね。
結論、「よくわからない」というのがブレランの醍醐味であり、ただの感想でもあるわけですねw
ただ、続編という難しいハードルの割には「レプリカントがレプリカントを殺す設定」や「レプリカントが自分をレプリカントと認識しているところから、人間だと考え、しかし、やっぱりレプリカントだった」みたいな流れは非常に面白かったです。ブレランの設定だからこそできる、非常にトリッキーな展開でここは満足でしたね!
ライアン・ゴズリングも、悲哀に見える表情が、良い意味でレプリカントらしくないというか、人間との間を絶妙に描いている演技で、素晴らしいなと感激しました!
ということで、まだまだドラマシリーズやアニメ版で盛り上がりを見せ続けるブレラン!
今後も期待ですね!!!
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